【認知症介護】在宅介護のポイント!限界と感じやすい3つの理由も解説

公開日:2024/08/27

認知症の介護

「認知症の家族をどのように介護したらいいの?」「認知症の家族とうまくコミュニケーションをとる方法を知りたい」

このように悩んだり不安を感じたりしていませんか。認知症を発症した家族を初めて在宅で介護する時は誰でも戸惑うものです。

この記事では、認知症の方を自宅でケアするポイントや限界と感じやすい理由などを解説します。認知症になった家族を自宅で介護する方法が分からず悩んでいるあなたの不安を解消するきっかけとなれれば幸いです。ぜひ、参考にしてみてください。

認知症とは?

認知症とは「さまざまな病気によって、脳の神経細胞が働かなくなり認知機能が低下して社会生活に支障をきたす病気」です。

厚生労働省の調査によると、65歳以上の高齢者は2012年では462万人でしたが、2025年には730万人(約5人に1人)になると予想されています。また、現時点(2024年6月)では、認知症を完治する方法は見つかっていません。

そのため、ひとたび認知症を発症すると長い間付き合っていかなければならず、家族の介護の負担も大きくなる恐れがあります。

参考:政府広報オンライン/知っておきたい認知症の基本

参考:厚生労働省/認知症ケア法ー認知症の理解(PDFファイル)


認知症の症状

認知症の症状は、以下2つに大別できます。

  • 中核症状
  • 行動・心理症状

それぞれ2つの症状について詳しくみていきましょう。

参考:厚生労働省/こころの情報サイト


認知症の中核症状

認知症の中核症状とは、脳の働きが低下することが原因で起こる症状です。

認知症の中核症状には「記憶障害」「見当識障害(日付や場所が分からなくなること)」「理解力・判断力の低下」などがあります。たとえば、以下のような症状があらわれます。

(記憶障害)

  • 家族や友人との約束を忘れる
  • 同じ商品を何回も買ってくる
  • 同じことを何度も聞いたり言ったりする
  • 数時間前、もしくは数分前の出来事をすぐに忘れる

(見当識障害)

  • 通い慣れた道で迷う
  • 自分がいる場所がどこか分からなくなる
  • 今日が何月何日、何曜日なのか分からなくなる

(理解力・判断力の低下)

  • 運転のミスが増える
  • お金の管理ができなくなる
  • 役所 での手続きが難しくなる

こういった症状が新たにあらわれている時は、認知症の症状が進行している恐れがあります。気になる症状がある方は、主治医に相談してみてくださいね。

参考:厚生労働省/こころの情報サイト


認知症の行動・心理症状(BPSD:Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)

認知症の行動・心理症状は認知症の方の本来の性格や取り巻く環境などに影響することによって起こる症状です。

行動・心理症状は、主に「不安・抑うつ」「徘徊」「錯覚・幻覚」「暴言・暴力」「睡眠障害」「物盗られ妄想」「失禁」などがあります。具体的には以下のような症状をきたします。

  • 憂うつでふさぎ込む
  • 誰もいないのに誰かいると言う
  • 自分のものを誰かに盗られたと疑う
  • ひとりになると不安や寂しさを感じる
  • ひとりで外出したものの外出の目的を忘れる

なかには「介護拒否」がみられることもあります。この行動・心理症状に、認知症の家族を困らせるケースも少なくありません。

参考:厚生労働省/こころの情報サイト


軽度認知障害(MCI)

軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)は、認知症と診断される一歩手前の状態です。つまり、認知機能は低下していると感じているものの、基本的に日常生活は問題なく送ることができます。

軽度認知障害は、正しく予防や治療することで健常な状態に戻せる可能性があります。

甲状腺機能低下症や慢性硬膜下血腫などが原因によるものは治療によって症状が改善するケースがありますが、認知症は根本的な治療は難しい病気です。

この予防や治療による症状の改善の有無が、軽度認知障害と認知症の違いと言えるでしょう。

参考:厚生労働省/あたまと身体を元気にするMCIとハンドブック(PDFファイル)


代表的な認知症の4種類とその原因

認知症には、さまざまな種類があり以下の4つが代表的です。

参考:厚生労働省/都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害へのの対応(PDFファイル)

これら4つの認知症は、基本的には完治できないとされています。それぞれの認知症の特徴をみていきましょう。


アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症は、認知症の67.7%を占めます。

アルツハイマー型認知症は「脳に特定のタンパク質が蓄積され、脳全体が萎縮していく認知症」 です。

症状はゆるやかなことが多く10年程度をかけて進行します。

アルツハイマー型認知症の代表的な症状は記憶障害です。

通常の年を重ねたことであらわれるもの忘れでは「その事柄を自分が忘れていた」と認識できます。一方で、アルツハイマー型認知症では「事柄」そのものがすべて抜け落ちてしまいます。両者の詳しい違いは、次を参考にしてください。

加齢による物忘れ認知症による物忘れ
・体験の一部を忘れる
・物忘れの自覚はある

・日常生活への支障はない
・症状は徐々にしか進行しない
・体験のすべてを忘れる
・もの忘れの自覚はない
(初期のころは自覚があることもある)
・日常生活への支障がある
・症状は進行する
「加齢によるもの忘れ」と「認知症によるもの忘れの違い」の参考例

ここで、もの忘れについて「昨晩の食事メニュー」で考えてみましょう。

加齢による物忘れの場合は食事をしたことは覚えているものの、メニューのすべて、もしくは一部を思い出せません。「昨日の夜は白ご飯と魚を食べたのは覚えているけど、他に何があった?」というイメージです。

一方で、アルツハイマー型認知症の方は食事をしたこと自体を忘れているのです。そのため「昨日は晩ごはんを食べてない」という発言がみられます。

記憶障害が進行すると日付や人、場所などが分からなくなり「さっき何をしたのか」「今から何をしようとしたのか」などを忘れます。

さらに、集中力や決断力も衰えると、結果として日常生活を送れなくなる恐れがあるため、症状に注意をしなければなりません。

参考:厚生労働省/都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応(PDFファイル)

参考:厚生労働省/認知症ケア法-認知症の理解(PDFファイル)


血管性認知症

血管性認知症はアルツハイマー型認知症に次ぐ多さであり、全認知症の19.5%を占めます。

 血管性認知症は「脳梗塞や脳出血などの脳血管障害の結果、認知症になった状態」です。脳血管障害の予防が大切であり、認知症の発症や進行を抑えることができます。主に以下のような症状があらわれます。

  • 不穏
  • 夜間の不眠
  • 意欲の低下
  • 自発性の低下

血管性認知症は、脳のトラブルにより発症するため運動障害や感覚麻痺、パーキンソン症状などの症状をともなうことがあります。

参考:厚生労働省/都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応(PDFファイル)

参考:厚生労働省/認知症ケア法-認知症の理解(PDFファイル)

参考:国立研究開発法人 国立長寿医療研究センター/意外と身近な「血管性認知症」


レビー小体型認知症

レビー小体型認知症はパーキンソン病によく似た症状があらわれる認知症であり、その割合は4.3%です。

レビー小体型認知症は「異常なタンパク質により脳細胞が破壊され起こる病気のこと」です。レビー小体型認知症を発症しても、物忘れや判断力の低下などの認知機能の低下は目立ちません。

ただし、初期には以下のような症状がみられることもあります。

  • 幻視(※1)
  • パーキンソン症状(※2)
  • 睡眠時の異常行動

レビー小体型認知症の進行は早く、初期から末期になるまで10年もかからないとされています。

※1 幻視:他の人には見えない(人・動物・虫など)が見えるという症状のこと。

※2 パーキンソン症状:パーキンソン病によくみられる症状。動きが遅い、転びやすい、睡眠障害などの症状のこと。


参考:厚生労働省/都市部における認知症有病率と認知症の生活機能障害への対応(PDFファイル)

参考:厚生労働省/若年性認知症支援ガイドブック 相談を受ける人が知っておきたいこと 改訂版(PDFファイル)

参考:公益財団法人長寿科学振興財団 健康長寿ネット/レビー小体型認知症 


前頭側頭型認知症

前頭側頭型認知症は「脳の前頭葉や側頭葉において、脳が萎縮して起きる病気」です。別名ピック病ともいわれています。

比較的、前頭側頭型認知症は、緩やかに病状が進行しますが、他の認知症と同じように根本治療が困難とされています。

前頭側頭型認知症は、特徴的な症状が起こりやすく「常同行動」と呼ばれる繰り返し行動する症状があらわれます。具体的には、以下のような症状です。

  • 同じ言葉ばかりを使う
  • 同じ道を通って歩き回る
  • 同じものばかりを食べる

前頭側頭型認知症では、万引きや暴力などがみられることもあります。さらには、文字を読み間違ったり名前が出なくなったりする症状が目立つタイプの認知症もあり、これは「意味性認知症」と呼ばれています。

家族の方の様子が気になったり、加齢による変化なのかはっきりしなかったりする時は、迷わず主治医に相談しましょう。

参考:参考:厚生労働省/若年性認知症支援ガイドブック 相談を受ける人が知っておきたいこと 改訂版(PDFファイル)



認知症の在宅介護の基本的なケアのポイント

ここでは、認知症の家族を在宅で介護する時の基本的なケアのポイントを解説します。認知症の家族の心と身体の状況によりさまざまなケアが必要です。主なケアは、以下のとおりです。

  • 見守りや観察
  • 健康の管理
  • こころのケア
  • 日常生活への支援(食事、入浴、排泄、着替えなどの介助方法)

日常生活のルーチンを確立することが効果的です。決まった時間に食事や入浴、睡眠を行うことで、認知症の家族に安心感を与えられるため、混乱せずに生活できるでしょう。

また、認知症の家族が生活する周囲の環境整備も欠かせません。危険物(ライター・薬・殺虫剤・タバコなど)を取り除いたり、分かりやすい標識やメモを活用したりして、安全で分かりやすい空間を作りましょう。

たとえば、トイレの場所が分からず失禁する場合は、以下のような対策をして環境を整えると効果が期待できるかもしれません。

  • トイレに近い部屋で生活する
  • トイレのドアに「トイレはここ」と張り紙をする
  • 夜間はベッドからトイレまでの通路を明るくする
  • トイレに行く時間を把握して、その時間になる前に「そろそろトイレに行きませんか?」と声をかける

さらに、健康管理も重要です。定期的な運動やバランスのとれた食事を提供することで認知症の家族の健康を守りましょう。



認知症の在宅介護での注意点

在宅介護 認知症

次に、認知症の方を在宅で介護する際の注意点を解説します。以下のポイントに注意してくださいね。

  • 自尊心を傷つけない
  • 認知症を理解する
  • コミュニケーションを取る
  • 健康管理をする

それぞれのポイントを詳しくみていきましょう。


 自尊心を傷つけない

認知症の家族に対するケアでは、自尊心を傷つけないよう配慮することが重要です。

というのも、認知症になっても感情が残っていると考えられるからです。たとえば「これくらいもできないの?」「できないなら、もういいよ!」などといった言葉をかけるのは避けてください。

認知症の家族の自尊心を傷つける言葉をかけると、介助者との信頼関係にも悪影響でしょう。


認知症を理解する

認知症を理解することは、在宅の介護において大切です。

認知症の家族への理解が深まることで、コミュニケーションが円滑になり、より良いケアを提供できるからです。

まず、単に認知症は記憶が失われるだけでなく、感情や行動にも影響する病気であることを知っておきましょう。これを理解することで、認知症の家族の言葉や行動に適切に対応できるようになります。

たとえば、認知症の家族が「ご飯はまだ?」「今日は何月何日?」など繰り返し同じことを聞いてきた場合も、それに対してイライラしにくくなるかもしれません。 認知症になる原因と起こりやすい症状や行動を理解できると、介助者の精神的なストレスを軽減できる可能性があります。


コミュニケーションを取る

認知症の介護において、コミュニケーションを取ることは認知症の家族の安心感を高めたり、介助者のケアの質を高めたりするため大事です。

コミュニケーションをしっかりとることで、認知症の家族がどのようなことに悩み、どのような心配があるのかを把握できます。 認知症の家族が求めているケアを行えるため、結果として認知症の家族に合ったケアの提供となり生活の質が高まるでしょう。


健康管理をする

在宅介護を続けていく中で認知症の家族の適切な健康管理は欠かせません。「あれ?なんかおかしい?」「いつもと違う?」など気になる症状がある時に病院を受診すると、早めに対処できます。

ほかにも、健康管理には「運動」と「食事」も大切です。

というのも、運動をすることで認知機能の低下を予防できるからです。運動をすることによって、脳の血液量や細胞が増えるとされています。たとえば、以下のような運動に取り組むと良いでしょう。

  • スイミング
  • ウォーキング
  • 足腰を鍛える筋トレ

運動をする頻度は週3日以上、半年以上続けての運動であることが好ましいです。中強度以上の運動(息が少しはずむが、一緒に歩いている人と会話ができるくらい)を続けると、認知症の症状を遅らせるという効果が期待できます。

ただし、認知症の方にとって運動することのハードルが高いケースがあるかもしれません。その際には、近所を散歩したり、買い物に行く時には階段を使ったりなど、日常生活の中で運動する機会を取り入れてくださいね。

また、栄養のバランスがよい食事を心がけることが大切です。

認知症の進行を抑える食べ物は現時点では明らかになっていません。

ですが、「五感」「季節」「彩り」「行事」などを感じられる食事や誰かと一緒に食事をとれると会話を楽しんだりすることで、脳にとって良い刺激になるため、認知症の症状を緩やかにできますよ。

参考:厚生労働省/あたまと身体を元気にするMCIとハンドブック(PDFファイル)




認知症の方へのコミュニケーションのコツ

認知症の介護 コミュニケーションのコツ

ここでは、認知症の方へのコミュニケーションのコツを7つ紹介します。

  • 否定せずに寄り添う
  • 共感する・相槌を打つ
  • ジェスチャーを取り入れる
  • 耳元でゆっくりはっきりと話す
  • 表情を観察しながら様子を見て話す
  • できるだけ短く簡単な言葉で話す
  • 怒ったり命令したりはしない

それぞれのコツを知って、認知症の方と適切なコミュニケーションをとってより良い関係を築きましょう。


否定せずに寄り添う

認知症の家族への対応では、否定せずに寄り添うことが重要です。これにより、認知症の家族の自己肯定感を保つことができ不安や混乱を軽減できるからです。

認知症の家族は、幻覚や幻視などの症状によって、時に現実とは異なる話をすることがあります。

ただし、それを否定せずに受け入れる姿勢が必要です。

たとえば、現実的には見えない人が見えると言って不安を感じているケースで考えてみましょう。

このケースでは「そんなところに人はいません」「人がいるわけがないでしょう」と認知症の家族の発言を否定することは好ましくありません。「そうなんですね、怖かったですね」「私たちが一緒にいるから大丈夫ですよ」と共感したり、寄り添ったりしてください。

これにより、認知症の家族の自己肯定感を保ち、安心できると感じることで、より良い介護が実現できます。


共感する・相槌を打つ

認知症の家族とのコミュニケーションにおいて、共感することや相槌を打つことは欠かせません。これにより、認知症の家族の気持ちを理解でき、安心感を与えられるでしょう。

認知症の家族が話す内容が事実と異なっていたり、過去の出来事を繰り返し話したりする場合もあります。

その際にも、共感の姿勢を持つことで、認知症の家族は自分が尊重されていると実感できるのです。「そうだったんですね」「良く頑張りましたね」などの共感の言葉を使いましょう。 認知症の家族の気持ちを理解し、安心感を与えることで症状が落ち着く可能性があります。


ジェスチャーを取り入れる

認知症の家族とのコミュニケーションにおいて、ジェスチャーを取り入れることは有効です。

なぜなら、認知症の家族は言葉の理解が難しくなることがあり、パッと見て分かることは言葉よりも分かりやすく安心できるからです。

具体例として、認知症の家族に「歩きましょう」と言うだけでなく、手を差し伸べて一緒に歩くジェスチャーを示すことで理解しやすくなります。結果として、認知症の家族はスムーズに行動できます。

このように、ジェスチャーを使うことで、言葉が通じにくい状況でもコミュニケーションを円滑に進められるでしょう。


耳元でゆっくりはっきりと話す

認知症の家族と話す時には、耳元でゆっくりはっきりと話すことが効果的です。これにより、話の内容を理解しやすくなり、コミュニケーションの質の向上が期待できるからです。

さらに、以下のポイントにも気をつけてください。

  • できるだけ短い言葉で簡単な言葉を使う
  • 表情を観察しながら話す
  • 認知症の家族のペースに合わせる
  • 怒ったり、命令したりなどの言い方をしない
  • 丁寧に繰り返し、ゆっくり伝える

認知症の方は、理解力や判断力が低下していることが多いため、早口で話すと内容が伝わりにくいです。さらに、高齢者の場合は聴力が低下しており、会話を聞き取れないかもしれません。

耳元で短い言葉でゆっくりと話すことで、聞き取りやすくなり混乱を避けられます。また、はっきりと発音したり、認知症の家族のペースに合わせたりすることで、言葉が明確に伝わります。

これにより、認知症の家族が話の内容を理解しやすくなり、介助者は話が伝わらないことへのストレスを軽減できるでしょう。


できるだけ短く簡単な言葉で話す

認知症の家族と話す際には、できるだけ短く簡単な言葉で話すこと、ストレスを感じたり混乱したりすることを軽減できます。

認知症により言葉の理解力が低下していることが多いため、長文や複雑な言葉を使うと、認知症の家族が意味を理解するのに時間がかかる場合があります。

具体的には「お風呂の時間ですよ」「今からご飯を食べましょう」と認知症の家族に短く伝えることが大切です。

すぐに理解でき、お風呂に入ったり食事をしたりなどスムーズに行えるでしょう。


表情を観察しながら様子を見ながら話す

認知症の家族と話す際には、表情を観察したり様子を見たりして話すことが大事です。

感情や気持ちを察知し、認知症の家族に合ったコミュニケーションができるからです。

認知症の家族に限らず、コミュニケーションでは言葉だけでなく、表情や身振り手振りからなど多くの情報を受け取っています。そのため、認知症の家族の表情を注意深く観察してください。

例えば、話している途中で認知症の家族が困っているような表情を見せたら「どうしました?」「分からないことがありますか?」と声をかけることで、その気持ちに寄り添うことができます。 「私の気持ちに寄り添ってくれる」「私の味方だ」と認知症の家族が安心できると、コミュニケーションがスムーズになり、介護を拒否することも少なくなるでしょう。


怒ったり命令したりはしない

認知症の家族と接する際には、怒ったり命令したりしないことが重要です。

認知症の家族は状況によっては理解が難しくなることがあります。結果として、思いもしない行動を取ることがあります。

実際に、同じ商品を繰り返し購入したり、徘徊して自宅に戻れなくなったりすることもあるでしょう。

ただし、そのような場合でも怒らず、穏やかに対応することが大切です。 怒ったり命令したりすると「この人(家族)は私に冷たい」「私にいじわるをしようとしている人」との印象が残り、在宅での介護を続けられなくなるかもしれません。




認知症の在宅介護で限界と感じやすい3つの理由とその対処法

在宅介護での認知症で限界と感じる理由

認知症の在宅介護で限界を感じやすい理由は以下のとおりです。

  • 身体的な負担
  • 精神的な負担
  • 金銭面の不安

それぞれの対処法も詳しく解説するため、実際の在宅介護で役に立ててくださいね。


1.身体的な負担

認知症の家族の在宅介護では、身体的な負担が介助者にとって課題です。

なぜなら、介助者は認知症の家族の日常生活をサポートしたり、介護を担ったりするからです。さらに、認知症の家族の身体機能が低下してトイレに行けなかったり徘徊したりするケースもあるでしょう。その時は、介助者は夜間眠れなくなるため「もう身体が限界だ」と感じるかもしれません。

この介助者の負担が大きい状況が続くと、在宅介護は成立しないでしょう。その際は、以下の介護サービスを使ってみてください。

  • 訪問看護
  • 訪問介護
  • デイサービス
  • ショートステイ
  • 訪問リハビリテーション

これらの介護サービスを活用するのも一手です。うまく活用できると、一時的に介護から手が離れられます。介助者は自分の時間を持てるようになるため、身体的な負担を軽減できるでしょう。 認知症の家族が利用できる介護サービスを知りたい方は、お住まいの市区町村役場や担当のケアマネジャーに確認してくださいね。

2.精神的な負担

認知症の在宅介護では、精神的な負担が介助者にとってストレスとなります。

認知症の進行にともない、言動の変化や理解力の低下によるコミュニケーションの難しさを感じるからです。または、振る舞いの問題によって介助者はストレスや不安を感じるでしょう。

そのため、身体的な負担の軽減だけではなく、精神的な負担を軽減するために、介護サービスの活用を検討してみてください。さらに、以下のような交流の場に介助者は参加すると良いでしょう。

  • 健康教室
  • 認知症カフェ
  • 地域のイベント
  • 音楽やスポーツを楽しむ場

また、在宅介護を担っている介助者は、ほかの人と交流を持たなくなりがちです。認知症の家族を介護したり心配したりするあまり自宅から出なくなる状況が続くと「もう限界だ」と感じるかもしれません。

自宅で過ごす時間が多くなるため、交流の場に出かけると気分転換になりますよ。認知症の家族が集まる交流会に参加できると、悩みを共有できたり新たな情報を知る機会となったりします。

さまざまなサービスを活用して、うまくリフレッシュすることが在宅介護を続けるコツと言えるでしょう。

参考:厚生労働省/私たちの認知症カフェ(PDFファイル)


3.金銭面の不安

認知症の在宅介護では、介護にかかる費用や家計の負担も問題となります。

在宅介護では以下のようなものに費用がかかります。

  • 医療費
  • 介護リフォーム費
  • 介護サービスの費用
  • 道具や設備の購入費用

さらに、介助者自身の収入減少が金銭的な不安を引き起こします。実際に、厚生労働省の「令和4年就業構造基本調査」によると、直近1年間で介護や看護により仕事を辞めた人は10.6万人。前回の調査(2017年)時点よりも約7,000人増加していることが明らかにされました。

在宅介護によって金銭的な負担を感じている方は、各種の公的支援や補助金制度を積極的に活用することが重要です。介護保険や福祉サービス、地域の支援制度などを申請することで、結果として認知症の家族とその介助者のさまざまな負担も軽減できるでしょう。

参考:厚生労働省/令和4年就業構造基本調査 結果の概要(PDFファイル)




 介護用品の役割と紹介

ここでは、介護用品の役割と実際の商品を紹介します。


介護用品の役割と重要性

介護用品は、認知症の家族とその介助者の方の負担を軽減したり、安全にケアをしたりするために欠かせません。

例えば、移動を助ける車椅子や排せつの際に使える防水シーツなどがあります。これらの用品を適切に使用することで、認知症の家族の活動をスムーズにできます。

さらに、介助者の身体的な負担を減らせるため、安心して在宅介護を続けることができるでしょう。


在宅介護の負担を軽減する3つの介護用品の紹介

認知症の家族を在宅介護でケアする際に困るポイントのひとつは排せつのケア。また認知症の予防に大切なのが、口腔ケアと言われています。介助者のケアの負担が軽減するように、以下3つの商品を紹介します。


  • 防水シーツ大人用

おむつを交換する時に、シーツを汚してしまうこともあるでしょう。シーツを汚すと、シーツを交換したり洗ったりとなにかと手間がかかります。

そこで、あらかじめシーツの上に「防水シーツ大人用」を敷いておくとその手間を省けます。肌触りも良いため、認知症の方が不快に感じなくて済むこともメリットです。


  • 香リ・フレッシュ 消臭スプレー 濃縮タイプ

便臭や尿臭はおむつを交換する時の問題のひとつ。とくに、夏場は臭いの問題に悩まされる介助者の方も多いでしょう。このスプレーの香料は、臭気成分を取り込んで組み合わさるため、1プッシュで効果的に消臭します。



  • クリンスマイル 薬用口腔保湿ミスト

認知症の家族をケアするために、口腔ケアは欠かせません。 このミストはサッと口腔内を潤すことができるミストタイプです。有効成分が口腔を殺菌するため、口臭を予防できますよ。

参考:厚生労働省/口腔機能の健康への影響 e-ヘルスネット




まとめ

認知症、在宅介護

認知症の家族の在宅介護は、認知症の中核症状や行動・心理症状によって介護者に大きな負担となりえます。

さらに、認知症は根本的に完治ができない病気です。認知症になった後、長期間の介護に悩みを抱えている家族の方も多いでしょう。

そのため、今回紹介した介護用品を活用してみてはいかがでしょうか。「ピジョンタヒラ株式会社」では、その他にも介護に役立つ商品を数多く取り揃えております。家族の方の介護負担を軽減できるアイテムばかりであるため、ぜひ活用してみてくださいね。

お問い合わせにも対応しているため、お気軽にご相談くださいませ。




プロフィール
西川正太(看護師/保健師)
大学卒業後、集中治療室や心臓血管病棟などで看護師として14年間勤務。主に、急性期の看護ケアに携わる。現在は、3人の子育てをしながら、医療や介護、看護に関わる記事の執筆や監修を行っている。
 



Contents

【現役看護師によるコラム】

▶vol.01 要介護認定から始める在宅介護の基礎知識~要介護認定の基準や申請方法・在宅介護について~

▶vol.02 【認知症介護】在宅介護のポイント!限界と感じやすい3つの理由も解説



【介護コラム】

▶vol.01  初めての在宅介護 基礎知識~在宅介護を始める前に~

▶vol.02  介護と介助の違いとは?介助の種類や方法、失敗しないポイント

▶vol.03  介護用品の選び方|在宅介護に必要なものと選び方のポイント

▶ⅴol.04  入浴介助の手順と注意点、必要な介護用品、入浴介助の方法などについて

▶vol.05  車椅子の選び方・使い方、車椅子の介助方法などについて

▶vol.06  清拭(せいしき)の手順について|全身清拭・部分清拭の注意点とポイント

▶vol.07  在宅介護で看取りをするために必要なこと、準備や心のケアなどについて

▶vol.08  食事介助の手順と注意点とポイントについて

▶vol.09  排泄介助(トイレ介助)の手順と注意点とポイントについて