要介護者に口腔ケアをする6つの目的!口腔ケアに必要な用品と手順も詳しく解説

公開日:2025/02/28

介護の口腔ケアとは

「要介護者の口腔ケアって何のためにするんだろう?」「どんなことに気をつけて口腔ケアをすればいいのか分からない」

要介護者の口腔ケアは、在宅介護をするうえで欠かせないケアであり、むし歯や歯周病のほかに、肺炎を予防したり家族や友達との会話を楽しんだりするために必要です。

この記事では、要介護者の口腔ケアについて疑問や悩みをお持ちの方に向けて、口腔ケアをする目的や具体的なケアの方法をわかりやすく解説します。この記事を読めば、要介護者の病気の予防に役立てられ毎日の生活の質を高められるでしょう。

要介護者の口腔ケアとは?

 口腔ケアとは、歯や口の清掃、口腔機能の維持・向上を目的としたケアのことです。ここでは、要介護者の口の状況や口腔ケアの2つの種類を詳しく解説します。

要介護者の口の状況

口の中は、細菌が生息しやすい37℃前後に保たれているため、細菌が増えやすい環境です。唾液1mlに数十億の細菌がいると言われています。

唾液には細菌の繁殖を抑える抗菌作用がありますが、要介護者の場合、唾液の分泌量が減少するため、唾液の自浄作用が低下します。この自浄作用とは、唾液の分泌で歯や歯間についた食べかす、歯垢(プラーク)といった口腔内の汚れを洗い流すことを言います。

自浄作用が低下することで、さまざまな口腔内のトラブルが生じやすくなります。

また、年を重ねると、入れ歯を使用するケースも増えます。入れ歯の手入れが不十分の場合、口腔内で細菌が繁殖しやすく、むし歯や歯周病、口内炎などができやすくなるため、入れ歯の手入れがカギになります。

要介護者の口腔ケアの種類

要介護者の口腔ケアには「器質的口腔ケア」と「機能的口腔ケア」の2種類があります。

器質的口腔ケアとは、歯や歯ぐき、舌などの清掃を中心とした口の中を清潔に保つためのケアのことです。

むし歯や歯周病の予防、口臭の軽減、誤嚥性肺炎の予防などが、器質的口腔ケアのおもな目的です。具体的には、歯磨きや入れ歯の洗浄、歯間ブラシやデンタルフロスを使った歯間の清掃、舌ブラシによる舌の清掃などがあります。

機能的口腔ケアとは「食べる」「話す」「表情をつくる」などといった口の機能を維持することを目的としたケアのことです。

口の周りの筋肉トレーニングや唾液腺マッサージなどが機能的口腔ケアに含まれます。具体的には、頬や舌の筋肉を動かす体操、唾液腺を刺激するマッサージ、嚥下反射を促す訓練などがあります。

要介護者は、ベッド上で過ごす機会が増え、口の機能が低下したり、口の中の細菌が増えたりするため、これら2種類の口腔ケアを実施していくことが大切です。

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要介護者に口腔ケアをする6つの目的

要介護者に口腔ケアをする目的は、口の健康を守るためだけではありません。糖尿病や高血圧といった生活習慣病の発症のリスクを抑えたり、日常生活をよりよくしたりするために口腔ケアは不可欠です。ここでは、口腔ケアの具体的な6つの目的を詳しく紹介します。

歯や口の病気を予防する

口腔ケアは、むし歯や歯周病といった歯や口の病気を予防するうえで非常に重要です。

これらの病気になると、痛みや不快感があらわれたり、入れ歯がうまく固定されないなどの症状が出やすくなります。厚生労働省「令和4年歯科疾患実態調査結果の概要」によると、むし歯がある人の割合は75~84歳で88.4%、85歳以上で83.8%であることが明らかになりました。この割合は、30年以上前の平成5年の調査のときよりも増加(平成5年時点で75~84歳:54.5%、85歳以上:39.4%)しているため、口腔ケアの重要性が高まっていると言えるでしょう。

また、口腔ケアでむし歯や歯周病を予防すると、歯の喪失や全身の健康への悪影響を防ぐことができます。例えば、歯周病は、糖尿病や高血圧などの生活習慣病を悪化させる要因のひとつとしても指摘されています。

口腔内の炎症は、さまざまな病気の原因となる可能性があるため、口腔ケアによる予防は、要介護者の健康を守るうえで不可欠です。

口臭を予防する

口腔内の細菌が増殖すると、口臭の原因になります。口腔ケアによって細菌の増殖を抑えられ、口臭を予防できます。

というのも、口臭の原因は口の中にあり、その多くは舌苔(ぜったい)と歯周病といわれています。

例えば、歯周病になると歯周病菌が産生するガスが口臭の原因となったり、むし歯が進行すると、腐敗した組織から臭いが発生したりすることがあります。ほかにも、ドライマウスになり唾液の分泌量が減ると、口腔内が乾燥し、細菌が増殖しやすくなるため口臭が発生します。

誤嚥性肺炎などの病気を予防する

口腔内の細菌が誤って肺に入り込むと、誤嚥性肺炎を引き起こすことがあります。

特に、高齢者の場合、嚥下機能(飲み込む機能)が低下していることが多いため、誤嚥性肺炎のリスクが高まります。厚生労働省「令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況」調査によると、死因の原因は多い順に悪性新生物(がん):24.3%、心疾患(高血圧性を除く):14.7%、老衰:12.1%、脳血管疾患:6.6%、肺炎:4.8%でした。肺炎で亡くなる方は5番目に多いことがわかります。

肺炎患者の69%が75歳以上で、入院中に肺炎を起こした患者(70歳以上)の70%以上は誤嚥性肺炎であるというデータもあります。そのため、在宅でも誤嚥性肺炎を起こす人は多いのではないかと考えられます。

口腔ケアによって口腔内の細菌を減らすことは、誤嚥性肺炎の予防につながるだけでなく、命を守るうえでも重要な役割です。

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認知機能の低下や低栄養を予防する

口腔内の状態が悪いと、食事が十分に摂れなくなり、栄養状態が低下することがあります。

口腔機能の低下により肉・魚介類・野菜・果物といった食品の摂取が減少し、食べやすい炭水化物や穀類、菓子類などの摂取量が増えるというデータもあり、食事のバランスが悪くなるため生活習慣病になるリスクが高まります。

さらに、噛む動作が少なくなると、口の周りの筋力の動きが悪くなりコミュニケーション能力が低下して、閉じこもりがちになり、人とのつながりが薄くなる傾向があります。その結果、脳への刺激が減り、認知機能が低下する恐れもあります。

口腔ケアによってこれらのリスクを予防することができます。噛むことは、脳の活性化を促し、認知機能の維持に役立ちます。また、食事をしっかり摂ることは、体力や免疫力の維持にもなるでしょう。

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食べる楽しみを持ち続ける

食べることは、生きる喜びのひとつですが、口の状態が悪いと食事が美味しく感じられなくなる場合があります。

なぜなら、口の状態が悪いと、味覚が鈍くなったり、食べ物が飲み込みにくくなったりするからです。

口腔ケアによってこれらの問題を改善することで、口の状態を清潔に保たれ、味覚が正常に働くため、食事を美味しく味わえるでしょう。

また、厚生労働省「令和4年歯科疾患実態調査結果の概要」によると、75~79歳の77.5%、80~84歳の90.1%、85歳以上の86.7%がブリッジ・入れ歯・インプラントなどを装着していることが明らかになりました。

入れ歯を使用している場合は、入れ歯をきちんと清掃し、快適に装着できるようにすることも食事を楽しむためには欠かせません。口腔ケアによって口の状態を改善し、食べる楽しみを持ち続けましょう。

会話する楽しさを維持する

会話は、人とのつながりを保ち、精神的な健康を維持するために重要です。

口臭があると、自信を持って会話ができなくなり、コミュニケーションを取ることに消極的になることもあります。また、入れ歯が合わなければ、見た目を気にしてしまい、会話を避けてしまうかもしれません。

口腔ケアによって、入れ歯をきれいな状態に保ち、かみ合わせもチェックしてください。また、口臭を予防することで、自信を持って会話を楽しめるようになるため、口腔ケアをしっかりおこなうことが大切です。

要介護者の口腔ケア用品

要介護者の口腔ケアに必要な用品は「歯ブラシ(歯の表面や歯間を清掃)」「歯みがき粉(歯をみがくために使用)」「歯間ブラシ(歯と歯の間の隙間を清掃)」などが基本です。

これらの用品に「デンタルフロス(歯と歯の隙間や歯周ポケットを清掃)」「マウスウォッシュ(口の中をすすぐ)」「口腔内潤滑剤(口の乾燥を防ぎ粘膜を保護)」などがあれば、より便利です。

これらの用品は、ドラッグストアや介護用品店で購入できます。

ピジョンタヒラ株式会社では、在宅で活用できる口腔ケアの用品を取り揃えております。効果的に口腔ケアを実施したい方は、ぜひ一度活用してみてください。

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要介護者に口腔ケアをする手順とポイント

要介護者の口腔ケアは、健康な生活を送るうえで重要な役割を果たします。適切な口腔ケアをおこなうことで、むし歯や歯周病などの予防、誤嚥性肺炎のリスク低減、QOL(生活の質)の向上につながるからです。

ここでは、要介護者に対する口腔ケアの手順と、それぞれの段階における重要なポイントを詳しく解説します。

1.入れ歯を外し口腔内のチェック

口腔ケアの第一歩として、まず入れ歯を使用している場合は、ゆっくりと取り外して、口のなかをチェックします。

歯ぐきや粘膜に異常がないか、注意深く観察することが重要です。具体的には、歯ぐきの腫れや出血、粘膜の発赤やただれ、口内炎の有無などを確認します。また、舌の表面に白い苔状のものが付着していないか、舌の動きがスムーズかなどもチェックしましょう。

これらの観察ポイントは、口腔内の状態を把握し、適切なケアをおこなうために不可欠です。

もし、異常が見つかった場合には、早めに歯科医師や歯科衛生士に相談し、適切な処置を受けてください。定期的な口腔内のチェックは、口腔内の健康状態を維持し、早期発見・早期治療につながるため欠かせません。

観察が終わったら保湿をします。保湿をすることで、汚れを落としやすくすることができます。

うがいができる場合はぶくぶくうがいをして、乾燥している方やうがいができない方は保湿剤を使うとよいでしょう。

また、取り外した入れ歯は、あとで丁寧に洗浄するため、一時的に清潔な容器などに保管しておきましょう。

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2.歯みがきをする・入れ歯を洗う

口腔内のチェックが終わったら、次に歯みがき・入れ歯の洗浄をおこないます。

歯ブラシに歯みがき粉をつけ、歯の表面を優しく丁寧にみがきます。 このとき、力を入れすぎると歯ぐきを傷つけてしまい出血する可能性があるため、あくまで優しく、歯の表面をなでるようなイメージでみがいてください。

歯ブラシの角度は、歯と歯ぐきの境目に90度になるように当て、小刻みに動かす(5~10mmを目安として1~2歯ずつみがく)と、歯垢の除去に有効です。

歯みがきをするときのみがく強さは、150~200gの軽い力(毛先が広がらないくらい)でみがくと良いとされています。

また、歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやデンタルフロスも併用すると、歯と歯の間の隙間や歯周ポケットの歯垢も除去でき、より口腔内を清潔に保つことが可能です。

入れ歯を使用している場合は、歯みがきと並行して、入れ歯も丁寧に洗浄します。入れ歯は、歯ブラシや入れ歯洗浄剤を使って、表面に付着した汚れを落とします。

とくに、歯と入れ歯が接する部分は汚れが溜まりやすいので、念入りにみがきましょう。洗浄後は、入れ歯に破損や変形がないかを確認し、清潔な容器に保管してください。

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3.粘膜や舌を清掃する

歯みがきが終わったら、次は粘膜や舌の清掃です。

歯ブラシや綿棒などを使い、歯ぐきや舌の表面を優しく丁寧に清掃してください。

歯ぐきは、歯ブラシで軽くマッサージするようにみがくと、血行が促進され、歯周病予防にもつながります。また、舌の表面は、舌ブラシや歯ブラシを使って、奥から手前に優しく清掃します。

舌の表面には、味蕾という味を感じる器官があるため、力を入れすぎると傷つけてしまう可能性があります。

あくまで優しく、舌の表面に付着した細菌や食べかすを除去するイメージで清掃しましょう。粘膜や舌の清掃は、口腔内の細菌を減らし、口臭予防にも効果的です。

4.うがいをする

粘膜や舌の清掃が終わったら、最後にうがいをします。

うがいをする際は、ガラガラうがいだけでなく、ブクブクうがいも取り入れると、口腔内の奥まで洗浄可能です。

ガラガラうがいは、喉の奥に付着した細菌やウイルスを洗い流す効果があり、風邪予防にもつながります。ブクブクうがいは、口腔内の粘膜に付着した細菌や食べかすを洗い流す効果があり、歯周病予防になるでしょう。

また、マウスウォッシュを使用すると、口腔内の細菌を減らし口臭予防をすることができるため、口腔内がより清潔に保たれます。

うがいができない方につきましては、後ほど詳しくお伝えします。

5.口腔内や唇に保湿剤を塗る

口腔内が乾燥している場合は、保湿剤を塗って乾燥を防ぎます。

口腔内の乾燥は、細菌の繁殖を促し、むし歯や歯周病、口内炎などの原因となる場合があります。保湿剤には、ジェルタイプやスプレータイプなどがあるため、使いやすいタイプを選び、口腔内全体に塗布してください。

唇は乾燥しやすく、乾燥すると傷ができたり口が開けにくくなったりするため、リップクリームで保湿するのも良いでしょう。 口腔内の保湿は、口腔内の健康状態を維持するうえで重要です。

要介護者の口腔ケアの注意点【事例別 】

口腔ケア 介護 症状別

在宅介護において要介護者の口腔ケアは、その方の状態によって注意すべき点が異なります。ここでは「寝たきり」「認知症」「飲み込み機能低下」「半身マヒ」「入れ歯装着」といったケースにおける注意点を詳しく解説します。

寝たきり要介護者の口腔ケアの注意点

寝たきりの要介護者の場合、唾液の分泌量が少ないため、口腔内が乾燥しやすくなります。

口腔内が乾燥すると、細菌が繁殖しやすくなり、口の中のトラブルが発生しがちです。

また、寝たきりの方は、誤嚥性肺炎のリスクも高いため、口腔ケアの際は口腔内の細菌をしっかり洗い流すことが重要です。

ただし、寝たきりの方は、体位変換が難しく姿勢を保てない恐れがあります。そのため、特にうがいをする際は安全な体位を確保し、無理のない姿勢でおこなわなければなりません。

具体的には、上半身をしっかり起こした状態、もしくはベッドを30度くらいギャッジアップした状態で口腔ケアすると良いとされています。口腔ケアに適した角度は一人ひとり異なり、体調によって調整が必要になるケースがあるため、かかりつけ医や言語聴覚士、看護師などの専門家と相談しましょう。

また、寝たきりの方は、口腔内の細菌が気管に流れやすく誤嚥性肺炎のリスクが高い傾向があります。そのため、口腔ケアの際は口腔内の細菌を取り除くことを意識したり、姿勢を整えたりすることが大切です。

認知症の症状がある要介護者の口腔ケアの注意点

認知症の症状がある要介護者の口腔ケアは、一般的な要介護者よりもさらに注意が必要です。

認知機能の低下や意思疎通の難しさから、口腔内の状態が悪化しやすく、さまざまなトラブルを引き起こす可能性があります。

認知症の進行に伴い、指示の理解や意思の伝達が難しくなる場合があるため、口腔ケアを拒否して協力が得られない場合があります。その際は、無理強いせず、根気強く説明したり、安心できる雰囲気を作ったりなど、コミュニケーションを工夫することが大切です。

また、認知症の方は、口腔ケアの手順を忘れたり、混乱したりしてしまうことがあるため、視覚的にわかりやすい説明や具体的な声かけを心がけると良いでしょう。

口腔ケアを拒否する原因が、痛みや不快感の可能性もあるため、口腔内の状態をよく観察し、異常があれば早めに歯科医師に相談することが重要です。

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飲み込み機能が低下した要介護者の口腔ケアの注意点

飲み込み機能が低下した要介護者の場合、口腔ケアの際に、歯みがき粉やマウスウォッシュなどの使用時に、誤って飲み込んでしまいむせてしまうことがあります。

そのため、しっかりと座った姿勢を保って口腔ケアをしなければなりません。具体的には、しっかりと上半身を起こす姿勢や椅子に座って顎を引いた姿勢などが、誤嚥しにくい姿勢として推奨されます。

本人の体調が思わしくなく、さらに口腔ケアが難しい場合は、一枚でケアできる歯みがきティシュなどで口腔内をしっかりと拭き取ることもおすすめです。

さらに、飲み込みの機能が低下している方の口腔ケアをする場合、口の体操や唾液腺のマッサージをすると口の機能を維持する機能的口腔ケアができます。

具体的には、口の体操は口を開ける・閉じる、舌を出す・引く、ほほを膨らます・すぼめるなどをおこない、口の周りの筋肉を動かしてください。唾液腺のマッサージは、耳の下や顎の下、ほほをさすったり揉んだりして動かしましょう。

唾液腺マッサージ

半身マヒがある要介護者の口腔ケアの注意点

半身マヒがある要介護者の口腔ケアは、マヒのある側とない側で、ケアの方法を変えなければなりません。

マヒがない側の口腔ケアは、健常者と同じような方法でブラッシングなどは実施できますが、飲み込みの機能が低下している恐れがあります。

マヒのある側は、唾液や食べかすなどが溜まっていても感覚がなく、それらを認識できなかったりするため、細菌が繁殖しやすい状態になりがちです。

そのため、口腔ケアの回数を増やしたり、抗菌作用のあるマウスウォッシュを使用するなど、口腔内の衛生状態を保つための工夫が必要です。

さらに、マヒがある側は感覚が鈍くなっていることがあるため、歯ブラシの圧力が強すぎたり、歯ぐきを傷つけてしまったりする可能性があります。

そのため、歯ブラシは毛先が柔らかいものを選び、優しく丁寧にみがくことが大切です。

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入れ歯を装着している要介護者の口腔ケアの注意点

入れ歯を装着している要介護者の場合、入れ歯と歯ぐきの間に汚れが溜まりやすくなるため、入れ歯を毎日丁寧に洗い、清潔に保つことが大切です。

入れ歯の洗浄には、専用の入れ歯洗浄剤を使用するとより効果的に汚れを落とせます。また、入れ歯の装着時に痛みがある場合は、歯科医師に相談し調整してもらいましょう。

入れ歯が合わないまま使用していると、歯ぐきの炎症や顎の骨が痩せていくリスクがあります。

定期的な歯科医院でのチェックと適切な入れ歯の管理が、入れ歯を長く快適に使用するためには不可欠です。

要介護者の口腔ケアに関するよくある質問と回答

Q&A

要介護者の口腔ケアは、ご本人だけでなく、介護する方にとってもさまざまな疑問や不安が生じるものです。ここでは、よく寄せられる質問とその回答をまとめました。

要介護者の口腔ケアをしないとどうなるの?

口腔ケアを怠ると、むし歯や歯周病が悪化し、口臭が強くなるだけでなく、誤嚥性肺炎や低栄養、認知機能の低下などを引き起こす可能性があります。

口腔内の細菌は、誤嚥性肺炎の原因となるだけでなく、血液を介して全身に運ばれさまざまな病気を引き起こすこともあります。

たとえば、歯周病は、慢性疾患を悪化させる要因のひとつであり、感染性心内膜炎という心臓の病気となり手術が必要となるケースもあります。

また、口腔内の状態が悪いと、食事が美味しく感じられなくなり、食欲不振や低栄養につながることもあります。さらに、噛むことは脳を刺激し認知機能の維持にも役立つため、口腔ケアを怠ると認知機能の低下を招くかもしれません。

このように、口腔ケアを怠るとさまざまな病気になったり、日常生活に影響をきたしたりするため、適切に口腔ケアをおこなうことが大切です。

要介護者の口腔ケアのマニュアルはあるの?

要介護者の口腔ケアに関するマニュアルは、自治体や歯科医師会などで作成されています。

これらのマニュアルは、インターネットで検索したり(口腔ケアマニュアル など)、歯科医院に問い合わせたりして入手できます。マニュアルには、口腔ケアの手順や注意点、使用する道具などが詳しく解説されており、介護者はこれを参考に、適切な口腔ケアをおこなえるでしょう。

また、歯科医院では、それぞれの患者さまの状態に合わせた口腔ケア指導もおこなっているので、積極的に相談してみてください。

これらのQ&A以外にも、要介護者の口腔ケアに関する疑問や不安は尽きないかもしれません。そんなときは、遠慮なく歯科医師や歯科衛生士、もしくは地域の地域包括支援センターやケアマネジャーに相談するのも一つの手です。

専門的なアドバイスを受けたり、専門家を紹介してもらったりすることで、より適切な口腔ケアができ、要介護者の健康な生活をサポートできるでしょう。

まとめ:要介護者の口腔ケアの注意点を知って安全に実施しよう

要介護者の口腔ケアは、健康な生活を送るうえで欠かせない重要なケアです。

適切な口腔ケアをおこなうことで、むし歯や歯周病などの予防、口臭の軽減だけではなく、誤嚥性肺炎のリスク低減、食べる楽しみの維持、QOLの向上につながります。

この記事では、要介護者の口腔ケアの目的や手順、注意点などを詳しく解説しました。特に、寝たきりや認知症、飲み込み機能低下といったケースにおける注意点については、具体的な対策や工夫も紹介しています。

要介護者の口腔ケアは、その方の状態に合わせて、適切な方法を選択し、安全に実施することが大切です。この記事を参考に、要介護者の口腔ケアに関する知識を深め、安全で安心な口腔ケアを提供しましょう。

<参考サイト・文献>

口腔ケア外来のご案内|国立研究開発法人 国立長寿研究センター

令和4年 歯科疾患実態調査結果の概要|厚生労働省

口腔機能の健康への影響 e-ヘルスネット|厚生労働省

口臭の原因・実態 e-ヘルスネット|厚生労働省

第2回医療計画の見直しに関する検討会|厚生労働省

令和5年(2023)人口動態統計月報年計(概数)の概況|厚生労働省

5疾病・5事業について|厚生労働省介護者向けの口腔ケアツール|島根県

プロフィール
西川正太(看護師/保健師)
大学卒業後、集中治療室や心臓血管病棟などで看護師として14年間勤務。主に、急性期の看護ケアに携わる。現在は、3人の子育てをしながら、医療や介護、看護に関わる記事の執筆や監修を行っている。
 

Contents

【看護師による在宅介護コラム】

▶vol.01 要介護認定から始める在宅介護の基礎知識~要介護認定の基準や申請方法・在宅介護について~

▶vol.02 【認知症介護】在宅介護のポイント!限界と感じやすい3つの理由も解説

▶vol.03 移乗介助―移乗介助の方法・ポイント・注意点などについて

▶vol.04 介護のおむつ交換の手順!9つの注意点や負担を軽減する方法を解説

▶vol.05 在宅介護でよくある5つの悩みとは?介護疲れの対処法と事例を紹介

▶vol.06 高齢者が眠れない原因とは?在宅介護でモーニングケアが大切な理由と基本手順

▶vol.07 要介護者に口腔ケアをする6つの目的!口腔ケアに必要な用品と手順も詳しく解説

 

【介護コラム】

▶vol.01  初めての在宅介護 基礎知識~在宅介護を始める前に~

▶vol.02  介護と介助の違いとは?介助の種類や方法、失敗しないポイント

▶vol.03  介護用品の選び方|在宅介護に必要なものと選び方のポイント

▶ⅴol.04  入浴介助の手順と注意点、必要な介護用品、入浴介助の方法などについて

▶vol.05  車椅子の選び方・使い方、車椅子の介助方法などについて

▶vol.06  清拭(せいしき)の手順について|全身清拭・部分清拭の注意点とポイント

▶vol.07  在宅介護で看取りをするために必要なこと、準備や心のケアなどについて

▶vol.08  食事介助の手順と注意点とポイントについて

▶vol.09  排泄介助(トイレ介助)の手順と注意点とポイントについて