車椅子の選び方・使い方、車椅子の介助方法などについて
公開日:2023/11/08
車椅子を購入する際の車椅子の種類と選び方のポイント、車椅子の介助方法などについてご紹介いたします。
車椅子は、介護保険のレンタル対象品になっています。介護保険をご利用の方は、まずはケアマネージャーにレンタルの相談をしてみるのも良いでしょう。
!注意!
本内容は一般的な情報をまとめたものです。車椅子の種類や製品により、具体的な操作方法が異なる場合があります。選び方についても要介護者や介助者の状態、使用環境などにより、専門家の判断が必要です。実際に車椅子を使用される際には、要介護者の状態などを専門家や販売店にお伝えになり、アドバイスをもらうようにしてください。
車椅子の選び方|気をつけるポイント
車椅子の選び方によって、車椅子を利用する方と介助する方の使いやすさや負担が大きく異なります。
ここでは、車椅子選びで失敗しないために気をつけるポイントをご紹介します。
身体の大きさに合ったものを選ぶ
車椅子は、乗る要介護者の身体の大きさに合っていることが重要です。
大きさが合わない車椅子は、座り心地が悪かったり、車椅子からズリ落ちバランスを崩しやすくなったりします。
また、長時間の使用で身体に痛みを感じたりするなど身体への影響が考えられるため、要介護者に適した車椅子を選ぶには、以下の寸法を測る必要があります。
- おしりの幅(一番広いところ)
- 座った姿勢でのおしりの後ろから膝裏までの長さ
- 膝下からかかとまでの長さ
- 足の裏から膝裏までの長さ
- 座面からわきの下までの高さ
- 体重
そして、寸法をもとに車椅子を調整しましょう。
- シートの幅=おしりの幅+4~5cm
- シート奥行=おしりの後ろから膝裏-5~7cm
- 前座面の高さ=膝下からかかとまでの長さ+5~8cm、「足こぎ」使用の場合は+0~2cm
- フットサポートの長さ=膝裏から足裏までの長さ
- 背もたれの高さ=座ったときの座面から脇の高さ+7~10cm
車いすの耐荷重よりも体重が軽いかどうかは必ず確認してください。
調整後、要介護者に座ってもらい座り心地を確認してください。
車椅子に乗る要介護者が自力で姿勢を保持できない場合は、安全のために、ヘッドサポートなどのオプション機能や、車椅子自体をチルト式車椅子(後述)にすることを検討してください。
車椅子を使う場面や環境で選ぶ
車椅子を使用する場面や環境に応じて選ぶのもよいでしょう。
例えば、買い物などの外出利用がメインであれば、持ち運びや車に収納しやすい折りたたみ式車椅子が適しているといった具合です。
利用場所の環境も考えてみましょう。
車椅子利用者の行動範囲や、外出先の環境がバリアフリーに対応しているのかなどの項目も検討するとよいでしょう。
さらに、杖やリフトなどほかの介護用品との兼ね合いもあります。
ご自宅まわりの環境や利用目的・シーンに応じた車椅子を選ぶことが重要です。
車椅子利用時間・予算で選ぶ
車椅子に座っている時間が長ければ長いほど、要介護者の身体に合った座り心地のよい車椅子を選ぶ必要があります。
ただし、座り心地のよい車椅子を選ぼうとすればするほど、購入費用がかかる可能性が高いです。
厚生労働省の「補装具費支給制度」により、車椅子や電動車椅子の購入費用の負担軽減が可能です。
原則は1割負担ですが、世帯の所得によって負担額は異なります。
このような制度の活用も視野に入れて、車椅子利用者のニーズや予算に合わせた選択をしましょう。
車椅子の種類
自分で操作できる電動タイプや車輪が6個ついているタイプなど、車椅子にはさまざまな種類があります。
車椅子の種類を大きく分けると、車椅子の操作方法による分類と車椅子の機能による分類に分けられます。
車椅子の操作方法による分類
車椅子の操作方法による分類とは、車椅子を操作する要介護者の使いやすさを基準に分類したものです。
タイプによって3つの分類があります。
①自走式車椅子
自走式車椅子は、自分で操作する車椅子です。
車輪が大きく、後輪の外側についているハンドリムを利用して、要介護者自身で車椅子を操作できます。
要介護者が少しでも車椅子の操作ができる場合は、自走式を選びましょう。
自走式の車椅子を利用することで要介護者の残存能力を活かす機会につなげるためです。
自分で操作するため、車椅子に乗る要介護者ご本人の握力・腕力が必要ですが、安定して走行できるため、介助者にとっても押しやすい車いすと言えるでしょう。
自走式車椅子には、介助ブレーキがないものもあるため、購入の際には気をつけてください。
②介助式車椅子
介助式車椅子は、介助者が操作しやすい車椅子です。
ハンドリムがついていないため、自走はできません。
後車輪が自走式より小さく小回りがきくため、外出用の車椅子として人気があります。
ハンドグリップには自転車のようにブレーキもついており、介助者が操作できるので、介助する際の負担が少なく、スムーズな移動ができます。
③電動車椅子 (自走式の一種)
電動車椅子とは、電気の力を利用して操作できるタイプの車椅子です。高齢者や手や足に障害のある方の移動に使われています。
従来のものとは異なり、車椅子で自走するのが難しい要介護者がリモコンや操作パネルを使って動かせるという特長があり、長時間の移動時にも使用できます。
ただし、従来の車椅子と比べ、重量が重く価格も高額です。
本体が大きいため、電車やバスの移動に苦労する場合もよくあります。
車椅子の機能による分類
車椅子の機能の主な分類として、以下4つがあります。
- 標準型車椅子
- モジュラー型車椅子
- リクライニング車椅子・チルト車椅子
- 自動ブレーキ装置付き車椅子
近年、車に安全性機能が導入されたように、車椅子にも安全性機能が導入され、車椅子自体も進化しつつあります。
それぞれメリット・デメリットがありますので、要介護者に合ったものを選ぶ必要があります。
①標準型車椅子
標準型車椅子は、病院や施設だけでなく、在宅介護でもよく使われている車椅子です。
初めて車椅子を利用する要介護者や介助者の方でも安心して使うことができます。
一般的に標準型車椅子には、横幅をコンパクトにできる折りたたみ機能がついていることが多いです。
さらに背もたれの部分を折りたたんでさらにコンパクトにすることができる「背折れ機能」があると、車に積み込むときや、自宅で収納するときに便利です。
持ち運びに特化したコンパクトタイプや、軽量の車椅子もあります。
②モジュラー型車椅子
モジュラー型車椅子は、全て組みあがっている標準型車椅子とは異なり、座面の高さや幅、タイヤの位置、アームサポートの高さなどを要介護者に合わせて変更できます。
要介護者の体格、障害の程度、在宅介護の環境などに合わせた車椅子にできるのが特長です。
調整できる箇所は、車椅子により異なります。
モジュラー型車椅子のデメリットは、機能を増やすほど価格が高くなる点です。
購入前に自分に必要なカスタマイズは何かを理解しておくとよいでしょう。
③リクライニング車椅子・チルト車椅子
リクライニング車椅子は、背もたれが傾く車椅子を指します。
座位を保つのが難しい方や、病状などの理由で座る姿勢よりも寝た姿勢に近いほうが楽な方に適しています。
チルト車椅子は、背もたれと座面が連動して傾くため、座っていておしりが前にずれていってしまうのを防ぐことができるのが特長です。
どちらの車いすも、おしりと背中にかかる体圧を分散することができるため、おしりや背中が赤くなってしまうことをなるべく抑えるサポートができます。
リクライニング車椅子・チルト車椅子は大きく、車いす自体も重いため、標準型車椅子よりも動かしづらいという点がデメリットです。
④自動ブレーキ付き車椅子
自動ブレーキ付き車椅子は、主に車椅子でブレーキのかけ忘れによる転倒事故を防止する目的で開発されました。
この車椅子は、要介護者が立ち上がったことを感知して、自動的にブレーキがかかる仕組みです。
その他、フットサポートを踏んだまま立ち上がっても、車椅子ごと転倒しないように、 フットサポートに体重がかかるとフットサポートが下がるタイプのものもあります。
車椅子利用者にとっては、安心感がある車椅子といえます。
ただし、座面の上にさらにクッションをつけたり、カバーをつけたりすると自動ブレーキが作動しにくくなってしまうため、注意が必要です。
車椅子の部位名称
車椅子の部位名称をそれぞれ簡単に紹介していきます。
・手押しハンドル
介助者が車椅子を押す時に握る場所です。介助用のブレーキが付いている車椅子もあります。
・介助ブレーキ
介助者が操作するブレーキです。手押しハンドルに付いていて自転車のブレーキと同じように操作できます。
キャリパーブレーキと呼ばれることもあります。
・ハンドリム
後輪の外側に付属している輪で、車いすに乗る方が車椅子をこぐ(自走する)ときに使用します。
・駐車ブレーキ
車いすを停止・駐車するときに使うブレーキです。駐車ブレーキをかけるとタイヤが固定され、車椅子が動かなくなる仕組みです。レバー式と足踏み式があり、レバー式は後輪の前方に付いており、レバーを引くとブレーキがかかります。足踏み式は、後輪の後方にペダルが付いており、足でペダルを踏み込むとブレーキがかかります。足踏み式はブレーキをかけるためにかがみこむ必要がないため、腰への負担を軽減できます。
・ティッピングレバー
段差などで介助者が車椅子の前方を持ち上げる際に使用する足元のレバーです。介助者がティッピングレバーを踏むと車いす前方が持ち上がり、低い段差を乗り越えることができます。
・アームサポート(肘掛け)
車椅子に乗る方の肘掛けです。座っているときにこの部分に肘を置くと楽な姿勢を保てるほか、移乗時の支えにも使います。着脱できるタイプや跳ね上げができるタイプもあります。
・フットサポート
車椅子に乗る方の足を置く場所です。両側に開くスイングアウトタイプ、上下に移動できるタイプなどがあり、移乗時に便利です。
利用目的や要介護者の状態に合わせて色々なタイプを組み合わせると、より快適に車椅子を使うことができます。
車椅子の使い方①| 介助者の基本的な操作方法を解説
車椅子は、歩行が困難な方をサポートできる便利な介護用品です。
車椅子の使い方や操作方法を知っていると、車椅子の方の外出や移動がもっと楽になります。
ここでは、車椅子の使用に慣れていない方のために、基本的な車椅子の使い方を紹介します。
基本的な操作方法
車椅子の基本的な操作方法は、以下の通りです。
- 介助者が車椅子の後方に立ち、両手で手押しハンドルを確実に握ります
- 要介護者は、アームサポート(肘掛け)をしっかりとつかみます(片麻痺の要介護者の場合は、麻痺側の腕をふとももの上に置いてもらうよう声かけをしてください)
- 介助者は、要介護者の足をフットサポートに確実に乗せます
- 要介護者に声をかけ、前後左右に気をつけながら、ゆっくりとしたスピードで進みます
車椅子の操作方法における注意点は以下の通りです。
- 路面の状態が悪い砂利道や砂地・傾斜が急な場所はできるだけ避けます
- 溝にある格子状のふたの上は、溝の向き対して斜めになるように通過します
傾斜が急な場所では、無理せずに周囲に助けを求めましょう。
最初は屋内や車などが来ない安全な場所で、基本的な操作方法を練習してから外出すると安心です。
ブレーキの使い方
ブレーキの正しい使い方を知ると、車椅子の事故防止につながります。
車椅子に応じてブレーキのかけ方は少し異なりますが、構造は単純です。
車椅子を駐車するときに使用する駐車ブレーキは以下の手順で使用します。
- 車椅子の真横に立ちます
- 片手で手押しハンドルを握りながら、もう一方の手で後車輪の前に付いている駐車ブレーキを後方に引きます
- 反対側の駐車ブレーキも後方に引き、ブレーキをかけます
- 必ず両方のブレーキがかかっているか確認しましょう
介助ブレーキは、手押しハンドルについているブレーキで自転車のブレーキと同じように操作できます。
手押しハンドルについている介助ブレーキレバーを握るとブレーキがかかり、介助ブレーキレバーを放すとブレーキが解除される仕組みです。
外で車椅子を操作する際に走行速度をコントロールしたい場面で、介助者が簡単にブレーキをかけられます。
ブレーキの使い方に関する注意点は、以下の通りです。
- 車椅子を止める際には必ず要介護者に声をかけて、ブレーキをかけましょう
- 急なカーブや急停止は、危ないので絶対にやめてください
- 声かけをこまめに行います
正しくブレーキを使い、安全に車椅子を利用しましょう。
車椅子の使い方②|階段での操作方法・介助方法
階段昇降時における車椅子の操作方法と介助方法をご紹介します。
階段で車椅子を利用する際は、安全性確保のために4人でサポートします。
どんなに緩やかな階段であっても、車椅子を使用する要介護者が一人で移動するのは大変危険です。
- 車椅子の駐車ブレーキをかけます
- サポートする4人を前後左右に配置し、車椅子を取り囲むように立ちます
- 階段を上るときは要介護者が階段を上る進行方向を見る向きで、下るときは要介護者の背中側が階段側に向くようにして要介護者が落ちないように移動します
- 前方で車椅子を持つ2人は、アームサポートとフットサポートを持ち、後方にいる2人は手押しハンドルとハンドリムをしっかりとつかみます
- アームサポート部分は、取り外しが可能な場合が多いため、 介助中に外れることのないように気をつけてください
- 車体が斜めにならないよう、お互いに声をかけ合いながらゆっくりと少しずつ進みます
階段を利用する際は、車椅子の正しい使い方を理解して、適切な支援を受けることが重要です。
車椅子の使い方③|車椅子の移乗方法
車椅子の移乗方法には、要介護者が自力で移乗する場合と、介助が必要な場合があります。
ここでは安全性を確保したうえで車椅子へ自力で移乗する方法や、介助における注意点も含めてご紹介します。
車椅子への乗り方|自力で移乗できる場合
- ベッドから車椅子へ自力で移乗する際は、ブレーキをかけた車椅子をベッドに近づけます
- アームサポートが外せる車椅子の場合は、ベッド側のアームサポートを外します
- ベッドの手すりとベッドから遠いほうのアームサポートをつかみ、身体の向きを変えて(アームサポートが外れる場合は、おしりをスライドさせて)座面シートに腰を下ろします
要介護者の筋力維持のためにも、可能な限り見守り、危ないと判断したらすぐにサポートできる位置にいましょう。
車椅子への乗せ方|介助が必要な場合の介助方法
ベッドなどから車椅子へ移乗する際の介助方法は以下の手順で行います。
- ベッドの高さを車椅子の座面の高さに合わせる
- 要介護者のおしりを移乗しやすいように前方に移動させる。その際は介助者は膝をつき、要介護者の腰を支えながら前方に移動させる
- 車椅子をベッドに引き寄せ、ブレーキをかける
- 両側のアームサポートを跳ね上げる
- 要介護者の上体を介助者に預けるように前傾にし、横に傾け、スライディングボードをおしりの下に差し込みながら車いすの座面に渡す
- 要介護者の足を、車椅子に近い方を前に出し、もう片方を後ろに引き、前後にする。
- 要介護者の身体をかるく前傾させながら、車いす側に傾け、重心を移動させて滑らせる
- 要介護者の身体をベッド側に傾けながら、おしりを座面奥に押し込むように滑らせる
- 要介護者の身体をベッド側とは反対に傾け、スライディングボードを引き抜く
- 両側のアームサポートを戻す
移乗の際は、腰痛にならないよう、スライディングボードなどの福祉用具を活用してください。
場面別|車椅子の操作方法・介助方法・注意
車椅子を使いこなすと、歩行が困難な方でも、自分の意志で自由に活動範囲を広げることができるようになります。
友達との買い物や旅行などの外出が、要介護者の楽しみにもなるでしょう。
しかし、車椅子で外出を楽しむ際には、事前の準備が必要不可欠です。
また、予想されるトラブルを把握し、状況に合わせた正しい使い方を知っておかなければ、重大な事故につながる可能性もあります。
車椅子に乗る要介護者や介助者の負担を軽減するために、ここでは、日常生活における車椅子の操作方法や介助方法、注意点を場面別にご紹介します。
トイレ
外出時に最も心配になるのが「トイレ」です。
行き先の近くにトイレはあるのか、狭いトイレではないかなど心配ごとは尽きないでしょう。
車椅子での外出先が決まったら、まず目的地近くのトイレ情報を調べると、トイレの場所が把握できるので安心です。
トイレは、おおまかにいうと、広さと機能性を備えたバリアフリーの車椅子対応(身障者)トイレと、一般のトイレに分けられます。
この項目では、バリアフリーの車椅子対応トイレを使用する場合と一般のトイレを使用する場合における介助方法をご紹介します。
バリアフリーの車椅子対応トイレを使用する場合
一般的に、バリアフリーの車椅子対応トイレは、車椅子が向きを変えるスペースやトイレに身障者用の手すりが設置されているなど、安心して利用できる設備が整えられています。
要介護者の身体状況を考慮すると、手すりがあれば自力で移乗できるケースと、移乗時に介助者によるサポートが必要なケースがあります。
- 手すりがあれば自力で移乗できる場合
できるところまで、本人の力でしてもらうよう声かけをします。
要介護者の依頼があったら、サポートします。
- 移乗時に介助者によるサポートが必要な場合
立位介助が必要な場合は、介助者が要介護者の脇の下に手を入れ、肩に手をかけてもらいながら立ち上がります。
ズボンや下着を脱がせる場合は、要介護者のバランスが崩れないよう気をつけます。
一般のトイレを使用する場合
車椅子で一般のトイレを使用する場合には、車椅子が入れる広さがあるかの事前の確認が必要です。
車椅子対応ではないトイレは、入り口やトイレ個室内のスペースが狭く、車椅子がトイレの中まで入れないケースが多いです。
トイレの中まで入れない場合は、トイレの入り口で車椅子を降り、個室まで歩く必要があります。
そのため、要介護者が短距離の歩行ができる状態でなければ、利用は難しいでしょう。
バリアフリーの車椅子対応トイレは、自治体ホームページなどに掲載されている場合もあります。
お風呂
お風呂で使われる車椅子は、シャワーチェアーやシャワーキャリーと呼ばれます。
シャワーチェアーは、身体を洗う際に下半身の負担を減らすためのものです。
背中と手すりのサポートがあるものが多く、姿勢を維持しやすくなっています。
シャワーキャリーは、車輪がついているため、車椅子のように座ったままで浴室内に入れ、とても便利な介護機器といえるでしょう。
転倒を予防するために、滑り止めマットやバスボードもあるとさらに安心です。
入浴は高齢者にとって大きな負担のかかる行為ですので、体調を崩さないよう、様子を確認しながら入浴介助を行います。
玄関
「段差を車椅子で上がれるのだろうか」と疑問に思う方もいるかもしれません。
少しの段差であれば、ティッピングレバーを踏み、車輪を上げるだけで簡単に乗り越えられます。
ほとんどの玄関は、以下の操作方法で簡単に上がることができます。
- ティッピングレバーを踏み、前輪を玄関の上に置きます
- そのまま車椅子を押し、後輪を玄関に乗せます
スロープを設置したり、「昇降リフト」や車椅子ごと持ち上げる「車いす用段差解消機」「椅子型昇降リフト」を設置したりすると移動しやすくなるでしょう。
電車・バスなどの乗り物
車椅子で電車やバスに乗るときは、以下の点に注意しましょう。
- 電車の場合
基本的には、係員が車椅子へ案内や昇降のサポートをしてくれますが、一部の駅では乗務員が昇降のサポートをしてくれます。
利用する駅に事前連絡をしたり、らくらくおでかけネットなどで駅のバリアフリー対応を調べておいたりすると安心です。
- バスの場合
バスには、車椅子対応のノンステップバスと対応していないバスが存在します。
乗る予定のバスが車椅子対応ではない場合、乗車できないことがあります。
1台に設置されている車椅子固定器具に限りがありますので、空きがない場合は次のバスを待たなければなりません。
可能であれば、利用する予定のバスを事前にバス会社に伝えておくとよいでしょう。
雨の日
東京メトロの調査によると、雨の日には約90%の方が車椅子で「危なかった」と感じるヒヤリハット経験があると答えています。
雨の日はどうしても地面が滑りやすくなったり、視界が悪くなったりするため事故が起きやすく、注意が必要です。
また、車椅子に乗りながら傘をさすのは困難です。
状況にもよりますが、レインコートを使用するとよいでしょう。
エレベーター
エレベーターの乗り降りは、後ろ向きで乗り、前向きに降りる方法が一般的です。
エレベーター内には、車椅子利用者が使うためのボタンがあります。
通常のボタンよりもドアの開閉が数秒長く、慌てずに乗り降りができます。
介助者はなるべく要介護者に声かけしながら、焦らずにゆっくりと進みましょう 。
エレベーター内では、車椅子利用者の身体がほかの乗客やエレベーターの扉に接触しないように、できるだけドアの中央付近を通ります。
車椅子利用者が単独でエレベーター内に乗る際も同様です。
利用時には、車椅子の前輪がエレベーターの溝にはまらないように気をつけます。
バリアフリー法|車椅子に関する内容
「バリアフリー法」として知られる「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」は、2006年12月20日に施行されて以降、車椅子対応が促進されています。
東京オリンピック・パラリンピック競技大会のレガシーとしての共生社会の実現に向け、2020年12月に「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律の一部を改正する法律」も制定されました。
車椅子に関する内容は以下のようなものが含まれます。
- 車椅子使用者が人とすれ違える廊下幅の確保
- 車椅子対応のトイレを設置
- 車椅子使用者用駐車場の設置
- 車椅子で利用しやすい空間の確保
・引用元:国土交通省・警察庁・総務省パンフレット「バリアフリー新法の解説」、国土交通省ホームページより引用
上記の内容をもとに、高齢者や障害者の方がより住みやすい社会が実現されてきています。
車椅子を正しく安全に使用して、事故を未然に防ぐサポートをし 、介助者の負担も軽減
車椅子は要介護者の身体や病状に合った適切なものを選び、正しく使えば安全で便利な介護用品です。
要介護者の活動範囲を広げ、生活の質も高めます。
一方で、使用方法を誤ると思わぬ重大な事故につながったり、介助者の身体に負担をかけてしまったりする場合もあるため、正しく安全に使用しましょう。
Contents
【介護コラム】
▶vol.01 初めての在宅介護 基礎知識~在宅介護を始める前に~
▶vol.02 介護と介助の違いとは?介助の種類や方法、失敗しないポイント
▶vol.03 介護用品の選び方|在宅介護に必要なものと選び方のポイント
▶ⅴol.04 入浴介助の手順と注意点、必要な介護用品、入浴介助の方法などについて
▶vol.05 車椅子の選び方・使い方、車椅子の介助方法などについて
▶vol.06 清拭(せいしき)の手順について|全身清拭・部分清拭の注意点とポイント
▶vol.07 在宅介護で看取りをするために必要なこと、準備や心のケアなどについて
▶vol.09 排泄介助(トイレ介助)の手順と注意点とポイントについて
【現役看護師によるコラム】