清拭(せいしき)の手順について|全身清拭・部分清拭の注意点とポイント

公開日:2023/11/21

清拭について

入浴できない日が続くと、ニオイやかゆみなどの不快感が現れたり、かぶれや発疹などの皮膚トラブルが起こりやすくなったりします。
要介護者が快適に生活するためには、身体を清潔に保つケアはとても重要です。
在宅介護をするうえで、避けては通れないものでしょう。

初めて清拭(せいしき)を行う介助者や、もっと効率的に清拭を行いたいとお考えの方に向けて、清拭の手順・注意点を紹介します。
清拭料や清拭タオルなど、清拭用品の選び方や使い方についても触れていますので、参考にしてください。

清拭とは

 

清拭とは、入浴できない要介護者に対して行う身体の清潔を保つためのケアの一つです。

浴用タオルや使い捨ての清拭タオルなどを使用して、身体を拭きます。

 

清拭には、以下のような効果があります。

  • 皮膚を清潔にする
  • 血液循環を促進する
  • 爽快感が得られる

このような効果があるため、入浴やシャワーが難しい要介護者に行うと非常に喜ばれるものです。

清拭は、入浴やシャワーよりエネルギー消費が少ないため、体調がすぐれないときにも行いやすいのも特長です。

 

 

清拭の種類とメリット・デメリット

 

清拭には、全身に対して行う「全身清拭」と、部位ごとに行う「部分清拭」があります。

それぞれのメリット・デメリットについて紹介します。

 

全身清拭

全身清拭とは、全身を拭く方法です。

洗髪が可能な場合は、頭は拭きませんが、病状や体調により洗髪が難しい場合は、髪の毛や頭部の清拭を行うことで洗髪の代わりをすることもできます。

全身清拭を行うメリット・デメリットは、以下の通りです。

 

メリット

  • 全身を拭くため爽快感が得られやすい
  • 1回の実施で全身を清潔にできる
  • 全身の皮膚を見ることができるため、皮膚トラブルを見つけやすい
  • 全身清拭を行うことで全身の血液循環が促され床ずれ(褥瘡)の予防につながる

 

デメリット

  • 全身清拭は時間がかかるため、要介護者の体力が必要となる
  • 体調が悪い場合や体力が減退している要介護者の場合は疲労が強くなってしまう
  • 要介護者側の気持ちが乗らない場合は精神的な抵抗が起きやすい

 

全身清拭は、要介護者・介助者ともに体力がある場合にはメリットが大きいですが、体調がすぐれなかったり、体力が落ちていたりする場合はデメリットのほうが気になってしまいます。

要介護者の体調や気持ちに配慮して、全身清拭を行うか、部分清拭にするか判断しましょう。

 

部分清拭

部分清拭とは、身体の一部分のみ行う清拭のことです。

顔、首、手足のみ、胸・背中のみ、陰部のみ、というように分けて行います。

組み合わせて行っても良いでしょう。

部分清拭を行うメリットとデメリットは以下の通りです。

 

メリット

  • 短時間で行える
  • 要介護者への負担が少なく体力面に不安がある場合でも実施可能
  • 要介護者の抵抗感が少ない場合が多い

 

デメリット

  • 全身清拭に比べると爽快感が少ない
  • 部分清拭のみで清潔を保つ場合は実施頻度が多くなる

 

要介護者の体調がすぐれないときや、体力が落ちているときは、部分清拭をこまめに行うと  負担が少なく済みます。

 

 

清拭をする際に必要な物品

 

清拭に必要な物品は以下の通りです。

  • 着替え
  • 浴用タオルまたは清拭タオル(使い捨てシート)3枚以上
  • お湯を入れたバケツ(お湯の温度は50℃〜60℃程度、フタ付きだとお湯が冷めにくい)
  • 洗面器
  • 使用済みのお湯を入れるバケツ
  • 清拭料
  • ゴム手袋(適宜)
  • 乾いたタオル(予備)

 

全身清拭をするときは着替えも行います。

身体を拭くときに服を脱ぎますので、その機会に着替えをしたほうが要介護者の負担も軽減できます。

きれいに拭いたあとに同じ服を着るのはあまり気持ちのよいものではありません。

全身清拭後は、可能な限り新しい服に着替えたほうがさっぱりして爽快感を感じてもらいやすくなります。

 

清拭に使う浴用タオルや清拭タオルは、顔・身体・陰部というように拭く部位を変えるタイミングで交換し、お湯も新しく入れ直すと最後まで清潔に清拭できます。

 

肌の汚れを落としやすくして、保湿効果もある清拭料を使う点もポイントです。

石鹸による清拭は、手間がかかるうえによく拭き取らないと肌荒れや乾燥の原因となってしまいます。

慣れていない介助者は、清拭料を使う方法がやりやすいでしょう。

 

 

清拭用品の種類とお悩み別の選び方

 

清拭用品の種類とお悩み別の選び方について紹介します。

 

清拭に使うタオル

清拭の際には、浴用タオルを使うのが一般的です。

浴用タオルとは、入浴時に使う薄手のタオルを指します。

薄手の生地であるため、軽くて絞りやすいのが特長です。

 

清拭では、タオルをお湯に浸けて絞る動作を繰り返し行いますので、薄手の生地である浴用タオルを使うほうが介助者の負担を軽くできます。

 

浴用タオルをお湯に浸けて絞ることが介助者の負担になる場合は、使い捨ての清拭タオルを使用する方法もあります。

清拭タオルとは、不織布などで作られた清拭用の使い捨てシートで、すでに清拭料の成分が染み込んでいるものです。

清拭シート、ディスポーザブルタオルなどと呼ばれることもあります。

 

綿タオルより肌に負担がかかるのではないかと心配になる方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、ある研究では「綿タオルより清拭タオルのほうが肌ざわりがよく、拭かれた感触がよい」「特に不織布の場合は、より肌触りがよい」という報告があります。

 

清拭タオルでお肌にやさしいものをお探しの方は、ノンアルコールのものや、保湿成分が配合されたものなどを選ぶとよいでしょう。

 

清拭料

清拭では、石鹸を使うとタオルで3〜4回拭き取らなければならず、手間と時間がかかります。

さらに拭き取りが不十分だと肌荒れを起こしてしまったり、石鹸が肌の油分を奪ってしまい肌の乾燥につながってしまったりするのが難点です。

 

これに対し、清拭料は石鹸と同じように汚れを落とす洗浄効果があります。

さらに拭き取り不要で保湿効果もあり、清拭の時間短縮や肌トラブルの防止に役立つため便利です。

お肌の乾燥が気になる高齢者に清拭をする場合は、石鹸の清拭よりも清拭料を使うほうが拭き残しの心配をする必要がなく安心です。

清拭料には液体タイプのほかに泡タイプもあります。

使用状況に合わせてお選びください。

 

保湿剤

保湿剤は、要介護者の肌に潤いを与え、乾燥を防ぐためのものです。

 

高齢者は皮脂が減少し、肌のバリア機能が崩れ、乾燥やかゆみが出やすくなります。

このような状態になると、肌は刺激を受けやすくなり、掻いたときに傷ができやすくなります。

傷ができてしまうと、さらに肌のバリア機能が崩れるという悪循環に陥ってしまいがちです。

この悪循環を断ち切るためには、肌を保湿してバリア機能を高めることが重要です。

 

清拭後、肌の水分量が多いタイミングで保湿剤を使うことでより高い保湿効果が期待できます。

肌の乾燥やかゆみが気になる要介護者には、清拭後に保湿剤を使うと改善が期待できるでしょう。

 

お肌の乾燥が気になる場合

お肌の乾燥が気になる場合は、以下の方法が効果的です。

  • しっとりタイプの清拭料を使う
  • ノンアルコール・保湿成分配合で不織布タイプの清拭タオルを使う
  • 清拭後に保湿剤を使う

 

清拭料や清拭タオルには、「しっとりタイプ」と「さっぱりタイプ」というように肌質によって配合されている成分が異なる場合が多いものです。

「さっぱりタイプ」でも保湿剤は配合されていますが、お肌の乾燥が気になる要介護者の場合は、保湿力の高い「しっとりタイプ」を選ぶようにしましょう。

清拭タオルはノンアルコールで保湿成分が含まれている製品を選ぶと、より乾燥を防ぐ効果が期待できます。

 

乾燥がひどくなると、かゆみで肌を掻いてしまい、傷ができやすくなります。

すでに乾燥してしまっている場合は、これらを実行し、保湿に努めるのが健やかな肌を取り戻す近道です。

 

汗などで蒸れやすい場合

汗などで蒸れやすい場合は、以下の方法が効果的です。

  • さっぱりタイプの清拭料を使う
  • さっぱりタイプの清拭タオルを使う
  • さっぱりタイプでも保湿成分配合のものがよい

 

汗などでお肌が蒸れやすくなっている場合には、汗や汚れをきれいに落とせるさっぱりタイプの清拭タオルを使うとよいでしょう。

すっきりと汗や汚れを落とせるので、要介護者の爽快感が高まります。

 

また、泡タイプの清拭料も人気です。

泡で汚れを包み込むため、拭き取るだけで汚れもニオイも取り除いてくれます。

 

汗をかきやすい夏場などは特にこまめにケアをしたいものです。

すすぎが不要なタイプのものは手軽に使えるので人気です。

 

 

お湯を使わずに頭皮や髪の毛をきれいにしたい場合

お湯を使わずに頭皮や髪の毛をきれいにしたい場合は、以下の方法が適しています。

  • ドライシャンプーで汚れを拭き取る
  • 泡タイプのドライシャンプーを使う
  • シートタイプの頭用清拭料を使う

 

ドライシャンプーとは、お湯を使わずにシャンプーできる製品です。

入浴や洗髪が難しい場合に使うと手軽に爽快感が得られます。

特に泡タイプのドライシャンプーは髪に馴染ませやすく、慣れない介助者でも使いやすいのが特長です。

汚れもニオイもすっきりと落とせます。

拭き取る際には、ティッシュなどで拭き取るのではなく、乾いたタオルを使うとよいでしょう。

 

頭皮や髪を清拭できるシートも販売されていますので、お湯を使わずに手軽に頭皮や髪の毛をきれいにしたい場合に便利です。

 

清拭の事前準備

 

清拭をはじめる前に、以下の準備が必要です。

  • 清拭を行うことを要介護者に伝えておく
  • 要介護者のトイレを先に済ませておく
  • 要介護者の体調が悪くないか確認する
  • 要介護者の体温や血圧などに異常がないか確認する
  • 要介護者が食前・食後でないか確認する
  • 室温を確認する(25℃前後が望ましい)
  • カーテンを閉めてプライバシーを保護する

 

落ち着いて清拭を行うために、要介護者の状態や室内環境を整えます。

高齢者の場合、体調不良に気付きにくくなります。

特に持病がある要介護者の清拭をする場合には、体温や血圧などの測定をして異常がないことを確認してから清拭をはじめましょう。

 

 

清拭の手順と清拭用品の使い方・注意点

 

清拭の手順と清拭用品の使い方・注意点について紹介します。

全身清拭と部分清拭に分けて、それぞれに適した内容をご紹介しますので、参考にしてください。

 

全身清拭

全身清拭の手順・注意点について、ご紹介します。

 

拭く順番は、上半身から下半身、手足の先から体幹の順番で行うのが一般的です。

タオルを使うときは、介助者の手のひらに収まるくらいに折りたたみ、扱いやすい大きさにして使いましょう。

新しい部位を拭くときには、きれいな面を表に出して拭くのがポイントです。

 

また、顔や耳の裏側など細かい部分を拭くときは、人差し指をタオルで包むようにして使うと拭きやすくなります。

 

お湯とタオル・清拭料を使って清拭する場合は、以下の手順で清拭料を含んだタオルを作り、各部位を拭きます。

1.お湯を洗面器に入れる

2.お湯に清拭料を入れてかき混ぜる

3.タオルをお湯につけて絞る(お湯が熱くて絞れない場合は厚手のゴム手袋を使うか、タオルの端を手に持ち、タオルの端以外の中央部分をお湯に浸けたあと、ひねるようにして絞るとよい)

 

適宜お湯を入れ替え、タオルを交換し清潔なタオルで清拭できるようにします。

 

お湯を使わず使い捨ての清拭タオルのみで清拭する場合は、上記の手順は不要です。

 

全身清拭の手順

全身清拭の手順は以下の通りです。

 

1.頭・顔・首を拭く

まずは顔から拭いていきます。

顔の中心から外側に向かって拭きましょう。

こまめにタオルの面を変えて拭くと、清潔な面で拭き取れるので汚れがきれいに落ちやすいです。

 

その流れで首も拭きます。生えぎわと耳・首のうしろは汚れが溜まりやすいので、念入りに拭きましょう。

ただし力の入れすぎは禁物です。

あまり圧をかけずにやさしく数回拭けば十分きれいになります。

心地よいと感じる圧のかけ方には個人差がありますので、要介護者に声をかけて希望を聞きながらするとよいでしょう。

 

頭はドライシャンプーを使用して洗髪します。

手順は以下の通りです。

1.ブラシで髪をよくとかす

2.ドライシャンプーを髪につける

3.髪と頭皮によく馴染ませ、指の腹でマッサージするようにもみ込む

4.髪と頭皮をよく拭き、乾いたタオルやドライヤーで髪を乾かす

ニオイや汚れをきれいに落とすことができます。

 

ドライシャンプーにはタオルを使用する泡タイプとスプレータイプ、タオルを使用しないシートタイプがありますので、好みに合わせて選ぶとよいでしょう。

 

2.手と腕を拭く

次は手と腕を拭きます。

血液循環を促進するため、手足の先から体幹に向かって拭きましょう。

手のひらと甲を拭きます。

指の内側に汚れが溜まる場合もありますので、可能ならば手を開いてもらい、手のひらや指の間も拭きましょう。

 

腕を拭く時は、要介護者の腕を下から支えて肘のあたりを持ちます。

手首から肘の方向に向かって前腕部分を拭いていきます。

 

次に肘を下から手で支え、肘から肩に向けて拭きましょう。

肘の内側や脇の下は汚れが溜まりやすいため、丁寧に拭きます。

 

慣れない介助者の場合、手首から肩まで一気に拭こうとしたり、手首だけを掴んで腕を持ち上げたりしがちです。

このような方法では、肘や肩を不自然な角度に曲げてしまったり、つい力を入れすぎてしまったり、皮膚の状態をよく観察せずに弱まっている部位をこすってしまったりすることがあり危険です。

 

ご紹介したような方法ならば、安全に清拭を行えます。

拭き終わって、まだ水分残りが気になるようでしたら、予備のタオルでやさしく拭き取ってください。

 

3.胸とおなかを拭く

次は、胸とおなかを拭きましょう。

前開きの服を着用している場合は上半身のボタンを外し、胸とおなかを出して乾いたバスタオルをかけます。

 

拭くためのタオルを準備してからバスタオルを外し、胸やおなかは円を描くように拭きます。

特に下腹部は、おへそを中心として時計回りに円を描くように拭くと、大腸の蠕動運動を促すことができ、便通をよくする効果も期待できます。

 

女性の場合、乳房の下に汚れが溜まりやすいため、丁寧に拭きましょう。

拭き終わって、まだ水分残りが気になるようでしたら、予備のタオルでやさしく拭き取ってください。

 

4.背中を拭く

背中を拭くときは、以下の手順で行います。

 

  • 座って行う場合

要介護者がベッド上で座れる場合は、身体を起こして座る姿勢になってもらい背中を拭いてもよいでしょう。

その場合は、座った姿勢になったあと、上半身の服を脱いでもらい肩からバスタオルをかけます。

 

  • 寝たまま行う場合

自力で動けない場合は、以下の手順で身体を横向きにします。

1.要介護者の膝を曲げる

2.介助者から遠いほうの要介護者の肩と腰を持つ

3.要介護者の身体を介助者のほうに向くようにして要介護者の身体を傾け、横向きに寝る姿勢にする

 

片方に麻痺がある要介護者の着替えも同時に行う場合は、介助者は要介護者の麻痺がない側に立って背中の清拭を行いましょう。

そのほうが清拭後の着替えがしやすくなります。

 

その後、上半身の服を脱がせてからタオルで背中を拭きます。

背中は背骨に沿って上下方向に拭きましょう。

直線的に拭いてもよいですし、背骨にそって腰から肩に向けて拭き、肩のあたりで折り返してもかまいません。

脇腹などやわらかい部位は円を描くように拭きましょう。

 

臀部もこのときに拭けるようであれば、円を描くように拭きましょう。

 

着替えも同時に行う場合は、背中を拭き終わったら新しい服に着替えます。

寝たままで着替えをする場合には、以下の手順で行います。

1.上側にある腕から新しい服の袖を通す

2.ベッドの接地面まで服を伸ばす

3.身体の下に着ていた服と新しい服を押し込み、要介護者の身体を仰向けに戻す

4.介助者がベッドの反対側にまわり、要介護者の身体を先ほどとは反対側を向けて横向きにする

5.着ていた服と新しい服の端が出てくるため、着ていた服を取り除き、新しい服を引き出す

6.もう片方の腕を新しい服の袖に通す

7.要介護者の身体を上向きに戻して襟を整える

 

着替えを同時に行う方法も慣れれば簡単にできるようになります。

 

5.足を拭く

次は足を拭きます。

布団など掛け物の下で要介護者のズボンを脱がせ、片方の足にバスタオルをかけて掛け物を外します。

 

バスタオルがかかっていないほうの足から拭いていきましょう。

足も血液循環を促進するために末梢である足先から身体の中心(足の付け根)に向かって拭きましょう。

 

足を持ち上げる場合、足首だけを持つのは危険です。

ふくらはぎあたりを介助者の前腕で下から支え、膝の裏側を持つようにすると、安定しやすくなります。

要介護者の膝を立てた状態で拭くと、足を持ち上げなくても拭けます。

膝を立てた状態で拭くほうが、慣れていない介助者や力が弱い介助者でも拭きやすいです。

拭き終わって、まだ水分残りが気になるようでしたら、予備のタオルでやさしく拭き取ります。

 

6.陰部を拭く

最後に陰部を拭きます。

デリケートな部位のため、要介護者自身で拭ける場合は、ご自身で拭いてもらいましょう。

その際、陰部を拭いたあとに肛門も拭くように声掛けしましょう。

 

要介護者が自力で陰部を拭けない場合は、介助者が拭きます。

オムツや下着を脱がせ、仰向けの状態で足を肩幅くらいに開き、バスタオルをかけます。

仰向けで足を開くのが難しい場合は、要介護者の膝を曲げて、介助者から遠いほうの要介護者の肩と腰に手を添えて介助者側に向くようにして要介護者の身体を横向きにします。

 

濡れたタオルを準備できたら、バスタオルを外し、以下の順番で陰部を拭きましょう。

  • 男性

陰茎→陰嚢→肛門の順番で拭きます。

 

  • 女性

陰部の前側から肛門に向けて一方向に拭きます。

陰部にあるヒダの部分は汚れが溜まりやすいため、丁寧に拭きましょう。

粘膜でできている部位のため、清拭料の使用はできません。

お湯で濡らしたタオルでやさしく拭きましょう。

 

男性女性ともに尿路感染症を予防するため、必ず尿道から肛門に向けて拭きましょう。

肛門付近には、大腸菌がたくさん付着しています。

大腸菌が尿道に入ると、尿路感染を起こし、膀胱炎や尿道炎を引き起こします  。

尿路感染防止のために、陰部清拭をするときには尿道から肛門に向かって拭かなければいけません。

 

拭き終わったら、オムツや下着を新しいものに交換します。

 

全身清拭の注意点

全身清拭を行う場合は、以下の点に注意して行いましょう。

1.服を脱いだ状態のときはなるべくバスタオルをかける

2.拭いたあとにそのまま放置すると、水分が蒸発する際に皮膚の温度を下げてしまい、冷えにつながることがある。

気になる場合は、濡れたタオルで拭いたあとに乾いたタオルで水分を拭き取る

3.体力の消耗を防ぐため、手早くスムーズに行う

4.拭くときや身体の向きを変えるときなど、要介護者に声をかけてこれから行うことを知らせるとよい

 

全身清拭は手順を覚えてしまえばそれほど難しくはありません。

上記の注意点を守り、ご紹介した手順でやってみて、徐々に要介護者の好みに合わせた方法を見つけていくとよいでしょう。

 

 

部分清拭

部分清拭の手順・注意点について紹介します。

部分清拭は、要介護者の体調がすぐれないときなど、短時間で要介護者を疲れさせずに清拭をしたい場合に適しています。

短時間で手軽にできるので、介助者の負担軽減にもつながるでしょう。

 

泡タイプの清拭料は、お湯の用意などが不要なため、手間がかからず部分清拭にお勧めです。

もちろん、全身清拭にも使用することができます。

 

1.部分清拭(顔・首・手足のみ)

顔・首・手足の部分清拭は、服を脱がなくても行えるため手軽にできます。

拭く順番は、顔→首→手→足です。

手軽にさっぱりしたいときに行うとよいでしょう。

 

具体的な手順は、全身清拭の顔・首・手・足の部分に記載していますのでご参照ください。

ズボンをはいている場合は、膝までたくしあげて膝下のみ拭く方法もあります。

 

2.部分清拭(陰部のみ)

排便時などオムツを替えるタイミングで陰部清拭を行うとさっぱりできます。

要介護者自身でできる場合は自分で拭いてもらうとよいでしょう。

介助者が行う場合は、粘膜部分を傷つけないようにやさしく丁寧に拭きます。

 

具体的な手順は、全身清拭の陰部の部分に記載していますのでご参照ください。

陰部の清拭は、デリケートな部位のため力の入れ方に気を付けてください。

力を入れすぎてしまうと、粘膜を傷つけてしまいますので注意しましょう。

 

3.部分清拭(頭皮・髪の毛のみ)

頭皮・髪の毛も清拭することができます。

お湯を使わずにシャンプーできるドライシャンプーなどを使うのが一般的です。

 

具体的な手順は、全身清拭の頭の部分に記載していますのでご参照ください。

 

清拭用品を活用して手軽に清潔で健やかなお肌に

 

今回は清拭の手順・注意点と清拭料・清拭タオルなど清拭用品の選び方・使い方をご紹介しました。

全身清拭だけでなく部分清拭をこまめに行うと、皮膚のトラブルが減り、肌を健やかに保てるようになります。

適切な清拭用品を選び活用できると、要介護者と介助者、双方の負担を減らせます。

今回ご紹介した内容をふまえて、清拭用品を活用して手軽に健やかなお肌を目指してくださいね。

 

 

Contents

【介護コラム】

▶vol.01  初めての在宅介護 基礎知識~在宅介護を始める前に~

▶vol.02  介護と介助の違いとは?介助の種類や方法、失敗しないポイント

▶vol.03  介護用品の選び方|在宅介護に必要なものと選び方のポイント

▶ⅴol.04  入浴介助の手順と注意点、必要な介護用品、入浴介助の方法などについて

▶vol.05  車椅子の選び方・使い方、車椅子の介助方法などについて

▶vol.06  清拭(せいしき)の手順について|全身清拭・部分清拭の注意点とポイント

▶vol.07  在宅介護で看取りをするために必要なこと、準備や心のケアなどについて

▶vol.08  食事介助の手順と注意点とポイントについて

▶vol.09  排泄介助(トイレ介助)の手順と注意点とポイントについて

 

【現役看護師によるコラム】

▶vol.01 要介護認定から始める在宅介護の基礎知識~要介護認定の基準や申請方法・在宅介護について~