第17回「口腔ケアグッズ」

公開日:2023/08/16

 「8020(ハチマルニイマル)運動」という言葉を聞いたことがありますか?80歳になっても20本以上の健全な歯を残しましょうという運動でした。平成元年から始まったこの運動、早30年以上がたちました。さて、この達成者はどれくらいいると思いますか?運動開始当時は約7%でした。ところが現在、50%を超えているのです。ものすごい変化です。自分自身の経験からも確かにそうかなと思います。訪問診療を始めた25年前、歯が残っている方は少なかったのですが、今は総入れ歯の方が少なくなっています。
 これはもちろん素晴らしいことなのですが、口腔ケアをする立場で考えるとかなり難易度が上がったことになります。色々な歯の残り方があり、それぞれに応じてケアをするということを念頭に、口腔ケアを実施するときのグッズについてお話ししましょう。

1 高齢者の口の中

介護の現場では下記のようなお口の方が多くいらっしゃいます。

歯が残っている要介護高齢者には大きく2つの特徴があります。

1つは孤立歯。あなたの歯は前から奥歯までずらっと並んでいると思いますが、何本か抜けてしまい、1本1本が孤立している状態です。ですから歯ブラシを口に入れてゴシゴシと横磨きができないのです。

もう1つは残根です。歯の頭の部分が折れてしまい、根だけ残ってしまった状態です。

 

2 歯ブラシ

もちろん口腔ケアの道具としては、歯ブラシがメインとなります。ドラッグストアなどで見てお分かりのように、様々な種類のブラシがあります。もちろん、あなたが気に入ったもので扱いやすければ結構です。

一般的に口腔ケアをする上で有利とされている要件を挙げておきます。まずはやわらかめなもの。市販のブラシは自分でブラシをするためのものであり、介護の現場では少し硬いです。また、ブラシの先は小さめを選択しましょう。前述したように孤立歯も多いので小回りが利くものが便利です。さらに画像の左のタフトブラシは孤立歯や残根であっても磨きやすく重宝します。

 

3 粘膜用ブラシ

歯以外にも粘膜に使用されるブラシがあります。代表的なものが柄付くるリーナブラシ(株式会社オーラルケア)です。あなたが食後頬の内側などに食べ物の一部が残っていたら舌で一生懸命とってしまうでしょう。しかし、口腔機能が衰え、さらにお口の中に麻痺があればそこにたまっていることがわからず、残ってしまうのです。例えば上の奥歯の外側や舌の下などに。指でかき出すのは大変です。そこでこのようなくるリーナブラシが重宝します。

 

4 舌ブラシ

口腔機能が低下した方や口腔乾燥(ドライマウス)がある方は舌のケアが必要です。逆に言うと、あなたのようにお口の動きがよく、唾液もしっかり出ている方は舌のケアはあまり必要がありません。しかし、高齢者の方では必要なケースが多くあります。そのような時、舌ブラシはとても重宝します。舌の奥にブラシを入れて軽く前にこする感じで使用するので、歯ブラシだと清掃できる面が少なく効率が悪いのです。その点、舌ブラシだと効率的に洗浄ができます。

 

5 入れ歯洗浄ブラシ

入れ歯使用の方でぜひ使ってほしいのが入れ歯洗浄ブラシです。小さい入れ歯では必要ないかもしれませんが、それなりに大きな部分入れ歯や総入れ歯でしたらぜひ使用してください。入れ歯洗浄はしっかりとブラッシングをしてほしいのですが、歯ブラシだと軟らかく、ブラシ部分も小さいのでとても効率が悪いです。手にとっていただくと分かりますが、入れ歯洗浄ブラシはブラシ部が大きく、硬さもあるので洗浄効率が高いのです。

 

他にも便利な口腔ケアグッズはあります。歯科関係者だからわかることも多くあります。訪問歯科が入っていれば環境が整備されていると思いますが、そうでなければあなたのかかりつけの先生や歯科衛生士に状況を話して相談してみてください。「これを使ってみるといいですよ」と提案はしてくださると思います。

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次回は実際の口腔ケアの仕方をお話ししましょう。

歯科医師 五島朋幸

 

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