第31回 「ブラッシング法」

公開日:2024/10/17

歯みがき指導 口腔ケア

 口腔ケアですからブラッシングは基本です。しかし、意外と介護者が行うブラッシング法はあまり伝えられることがありません。そしてこの連載も31回目にしてついにブラッシング法の話が登場です!実は、私たちにとって、意外と話しにくい内容なのです。理由は簡単。人によって状況があまりにも違うので、一般化してお話しにくいのです。そこでよくあるのは、自分で歯を磨く時のブラッシング法を解説するようなものです(ローリング法とかバス法とか)。書き手としてその気持はわかるのですが、実際の現場でどれほど役に立つのかは不明です。それは自分の歯の磨き方ですから。
 そこで今回、私自身がどのような現場でも基本的にやっている五島オリジナルの3回法についてご紹介します。あくまでも私のやり方ですから正解というわけではありませんが、参考になれば幸いです。

ブラッシング方法

口腔ケアを介護者(職)がやらなければならない状況というのは、ご本人がブラッシングできない、または十分にできないケースです。その多くはお口の機能も低下しており、食べかすが残っている状態で口腔乾燥もあるようなケースが多いです。そのようなケースを想定します。

図1上の前歯は折れて残根になり、下の歯には食べかすやプラークが溜まっている状態

第一段階

ブラシ部分が大きめ、柔らかめの歯ブラシでとにかく食べかすを取るように大きく動かしてブラッシングします。ポイントは、可能な限りうがいを多くしていただくこと。極端に言うと5秒ブラッシングをしたらうがいをするというイメージです。目的はあくまでも食べかすを取ることなので、ブラシを細かく動かしたりする必要はなく、大雑把に動かして頂いて結構です。うがいができないケースはちょっと難しいのですが、ブラッシングで掻き出し、口腔ケア用ウェットティッシュで拭き取るようにします。このようなブラッシングを食べかすが目立たなくなるまで続けます。

第二段階

今度は先程よりもブラシが小さめのブラシ(クリンスマイル 口腔ケア歯ブラシなど)を用いて1本1本磨いていきます。このブラッシングは、残っている歯の状況により異なりますが、いわゆる横磨き(スクラビング法)で1センチ程度のストロークで行います。第一段階よりも少しブラッシング圧を強めて行います。この時、あまりにも歯ぐきの近くで行うと、歯ぐきを傷つけてしまうので注意しましょう。目的はプラーク(歯垢)を除去することですから、なくなるまで行います。

第三段階

最後の仕上げと、お口全体の刺激や歯ぐきのマッサージ効果を期待して、第一段階で使用した歯ブラシでお口全体を仕上げ磨きして行きます。ここでは、食べかすやプラークはもう除去されている前提ですから、細かい動きは不要です。ブラシを優しく、大きく動かしていきます。  つまり、第一段階は食べかす除去、第二段階はプラーク除去、第三段階はマッサージというイメージです。

この五島オリジナル3回法ブラッシング、ブラシが2種類、3段階あるのでとても面倒に感じますが、実はシンプルです。例えばブラシが1本しかない時、第一段階と第三段階ではブラシに加える圧力を抑え、優しく動かし、第二段階ではピンポイントでしっかりプラークを除去するようにします。また、3段階あると面倒くさいと思われるかもしれませんが、第一段階で食べかすとともにプラークも多く除去されてしまうので、第二段階は本当に局所的にブラッシングをすれば終わります。食べかすもプラークも残っているのに最初からブラシを細かく動かしていくような口腔ケアよりも時間的に短くなることもあります。

 ブラッシング法は歯の残り方、状態によって大きく異なります。今回は歯ブラシを用いたブラッシング法でした。しかし、歯間ブラシ、デンタルフロス、タフトブラシなど様々なグッズがあります。それらを補完的に使用しながら口腔ケアを実践しましょう。

 次回は、機能的な口腔ケアについてお話します。

歯科医師 五島朋幸

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